「国民から鉄へ、人から武器へ」の令和5年度予算
◆規模ありきの議論
令和5年度予算案が23日に閣議決定された。
予算案は来年度の政府が何に重点的に取り組むのかを明らかにするものである。
来年度の目玉が防衛費にあることは、衆目一致するところであろう。
防衛費は令和4年度から1兆4214億円増の6兆8219億円となった。そして、防衛費は社会保障費に次ぐ2番目の歳出項目となった。
これは岸田内閣が「防衛指向内閣」、あえて野党的な言い回しをすれば、「軍事最優先内閣、国民から鉄へ、人から武器へ」と位置づけることができるかもしれない。
岸田内閣発足当初、「分配戦略」と言っていたことが随分と遠い過去のように思える。
確かに、ロシアのウクライナ侵攻が長期化する中で、防衛のあり方の見直しが必要であろう。国民的な議論が必要な局面である。
しかし、年末の税、予算の決定過程で露呈したのは、額ありきであった。浜田防衛大臣は、23日の記者会見の中で、様々な試算を行ってきたが、6兆8千億円の詳細はお答えできないとする。
一方、中身が全く説明されていない大幅な防衛費の増加に向けて、財源として法人税や所得税、たばこ税などの1兆円の増税は決まった。
◆増税だけが残るのでは
しかし、防衛費が大幅に増加したが、果たしてこれを執行する能力が今の防衛省にはあるのだろうか。
弾薬を増やすと言うが、これを道ばたに置くわけにはいかない。相応の弾薬庫が必要であるが、この整備計画はどうなっているのか。また、弾薬を製造する企業も、一定の見通しのもとで生産しているはずである。急に、倍の弾薬を製造するように言われても、困難であることは容易に予想できる。つまり、予算は十分に執行されない可能性が高い。
予算額は増やしたが、実質的な歳出は十分に行われない可能性は十分にある。一方、与党の税制改正大綱に増税は文章化された。
防衛費増額というお祭りの中で、祭りの後に残るのは増税だけとなると、笑うに笑えない。
◆軍事費は財政破綻の道
太平洋戦争の後、日本の財政は破綻した。国家予算の大きな割合を使って建造された戦艦大和や戦艦武蔵は海に沈み、軍事が膨張する過程で日本の民主主義は死に、そして、何よりも多くの市民、戦争にかり出された人々など、多くの国民の命を奪った。生産基盤は失われ、多額の借金を返済することができなくなり、財政が破綻したのである。
歴史の教訓を思い出す「とき」である。