第1034号 カジノは必要か

2022年6月4日 (土) ─

 大阪ではカジノを含む統合リゾート整備計画が、2029年開業を目指して着々と進んでいますが、今、カジノが日本に必要かは、あらためて問い直さなければならない問題です。

◆不透明な採算性
 カジノには、倫理的な問題やギャンブル依存症対策の必要性もさることながら、何より本当にビジネスとして採算が取れるのかを厳密に検証する必要があります。

 2年半前に私が国会審議で国土交通大臣を質した際には、政府はカジノを含む統合リゾートを成長戦略の目玉と位置付けていたにもかかわらず、明確な市場規模すら算定していませんでした。カジノの市場規模は7000億程度ではないかという私の試算に対し、大臣はおそらくその程度とした上で、リゾート施設全体では1兆円程度ではないかと答弁しました。現在、大阪府市の見積もりもこの数字をおおむね維持しており、おおよそ年1.1兆円程度の経済波及効果を見込んでいます。

 しかし、カジノを取り巻く状況は2年半前から一変しています。コロナ禍により世界の人の流れは激減し、回復の流れはあるものの、コロナ禍前の水準を回復し、さらに増加するかは全く不透明な状況です。

 大阪府市の見込みによると、カジノを含むリゾート施設を利用する外国人は年間600万人に及びますが、コロナ禍前の2019年のピークでも、海外からの観光客は年間3000万人強であり、1都市の1施設に600万人が押し寄せるという計画は、甘い見通しと言わざるを得ません。

◆事業者撤退の危険性
 もう一つの大きな課題として、事業者の撤退の可能性があります。統合リゾートの整備には1兆円ともされる事業者投資が見込まれ、事業期間は35年と長期にわたり、大阪市としても土地所有者として790億円の地盤沈下対策等費用の支出が生じます。

 しかし、カジノ運営を行う民間事業者が仮に採算が取れないと判断した場合は早々に撤退することも実質的に自由なため、その際には結果として国や大阪府市が負担を負う危険性が指摘されています。世界を見渡しても、採算の取れないカジノが閉鎖されるのは普通のことで、そのリスクに備えた制度設計が出来ていないところも、カジノ計画の大きな問題点です。

◆カジノを考え直す必要
 カジノに関連して、山口県阿武町で誤振込みされた4630万円を、逮捕された被疑者がオンラインカジノで使い込んだのではないかとの事件が発生しています。この件に関し、先の予算委員会集中審議でわが党議員が岸田総理に対応を質し、総理はオンラインカジノに対し厳正な取り締まりを行うと答弁しましたが、世界では爆発的に利用が増加しており、将来的には現実のカジノ施設が淘汰されていくのではないかとも言われています。カジノ施設の建設を進める上では、オンラインカジノの実態分析も合わせて進めて行く必要があるでしょう。

 こうした諸課題が山積し、庶民の生活が苦しくなる一方の今、当初の予定でカジノ建設を進めていくことには疑問があります。このままでは壮大な税金の無駄遣いとならないか、あらためて国会審議で検証していくことが必要と考えています。

 

スタッフ日記「旅行再開への期待」

 6月1日から外国人旅行客の水際対策が大幅に緩和され、入国者数の上限も1日2万人へと引き上げられました。リスクの低い98ヶ国はワクチン接種の有無に関わらず、入国時の検査や自宅待機が免除となり、日本各地で外国人旅行者の受け入れが再開されました。再開はまだ早いのではという心配の声や、一方で、旅行業やホテル業、観光に携わるお土産物店や飲食店から歓迎の声が聞こえてきます。

 奈良の観光においては、JR東海が「いざいざ奈良」キャンペーンを展開し、大河ドラマでおなじみの鈴木亮平さんが東大寺やならまちを散策するCMが流れています。中川政七商店さんが運営する喫茶店「茶論」のかき氷を美味しそうに口に入れる姿が印象的でした。

「いざいざ奈良」ホームページを見ると、奈良の魅力が色んな角度から紹介され、奈良に住む私たちにとっても新しい発見があります。すぐにでも実際に訪れて体験してみたくなります。

 また星野リゾート、法務省、奈良市の共同の計画によると、国の重要文化財「旧奈良監獄」を活用したホテル事業に合わせて、鴻ノ池運動公園にスケートボードパークやランニングステーションの整備を予定しているそうです。歴史ある施設を活用しながら地元の市民がスポーツや憩いの場として利用できる新しい価値が創設されます。

 世界中から多くの人が訪れ、奈良の歴史に触れ、楽しむ、そんな日常が戻りつつあります。東部の大柳生出身の私としては、柳生、田原、月ヶ瀬の美味しいお米、野菜、お茶をいっぱい楽しんで帰ってほしい!とアピールしたいです!(新人スタッフN)

第1034号 カジノは必要か