第1002号 岸田政権との対峙
4日、臨時国会が召集され、岸田文雄自民党総裁が内閣総理大臣に指名されます。
◆長老政治の根深さ
メディアを賑わせた総裁選ですが、終わってみれば当初有力と見られていた河野氏は議員票で失速して票が伸びず、決選投票では岸田氏の圧勝に終わりました。改革を強く訴え、圧倒的な国民の支持を受けていた河野氏が惨敗したことは、自民党議員、とりわけ議員票に影響力を持つ重鎮議員と国民の意識とのズレを表しており、岩盤のような長老政治の根深さを強く感じました。
◆岸田政権の本質は
岸田総裁はコロナ対策、新しい日本型資本主義、外交安保の3つの政策実現を掲げていますが、このうち外交安保は従来の自民党政権の継承と言えます。
一方で、コロナ対策ではPCR検査の拡大や持続化給付金の再支給など、経済政策では分配の強化、中間層拡大など野党と類似する主張が多く含まれており、リベラルに舵を切ったかのように見えます。
日本の窮状と格差拡大を考えるとこれらの政策はオーソドックスであり、岸田総理が本気で実現しようとするならば、野党もあえて否定する必要はなく、むしろ国民のために協力して実現を模索すべきです。10月21日まで衆院議員の任期が残っている以上、岸田総理が本気ならば、臨時国会で様々なコロナ対策が実現できるはずです。
しかし、安倍・菅政権の主要閣僚を次々党の重役に起用する長老への忖度や、国民不在の解散総選挙日程の駆け引きばかりが先行し、10月の臨時国会での緊急的なコロナ対策や立法が全く見えてこない現状を考えると、新政権でも自民党政治の根本に変化はないと考えるのが適切です。
このままでは実質的な政策審議が再開されるのは11月中旬以降となってしまい、秋から冬にかけて心配されるコロナの再流行に備えられません。政権発足前の段階ですでに、スピード感と本気度の欠如が明らかになったと言えます。
◆政権を見極める目を
岸田総裁が政策の目玉として分配の強化や中間層の拡大を掲げるのは、野党の主張をまるまる取り入れて選挙の争点を消すためのパフォーマンスに過ぎないという評価もあれば、もともとは岸田総裁が率いる派閥「宏池会」がオリジナルで主張してきた重要な政策だからだという反論もあります。
ここで大事なのは、政策をパクったパクられたという水掛け論的争いではなく、政策の実現可能性と国民の生活向上の点で、岸田案と野党案または私が主張している案がどのように異なっているかを国民に丁寧に説明し、その評価を慎重に見極めて頂くことだと思います。
例えば、岸田案からは、分配を実現させるための富裕層や大企業に対する増税及びそれとセットになった消費税減税のような大衆減税の視点が見えてきません。この点で、党の長老や財務省に忖度し、本気の税制改革を断行する気迫が感じられず、分配と格差解消の実現可能性に疑問を持たざるを得ません。
一つ一つ、こうした本質的差異を提示し、あとは国民の審判にゆだねることが、今なすべき岸田政権への対峙と考えます。