第966号 展望無き緊急事態
東京都などに緊急事態宣言が発令されて1週間以上が経過し、大阪府などにも宣言が拡大されました。しかし、感染者数や街中の人の動きに大きな変化は見られず、来月7日の期限までに十分に感染者数を減少させて解除することは早くも困難になりつつあります。
◆示されぬ長期展望
緊急事態宣言が効果を上げない理由は、飲食店の時短営業やテレワーク要請中心で中身がないことに加え、長期的展望を示さない政府の場当たり的対応に国民が混乱し、行動指針が見いだせない状況に陥っているところにあると考えます。
例えば今回の緊急事態宣言で、どの程度の感染縮小がいつまでに見込めるかの詳細なシミュレーションは提示されていませんし、宣言が長引いた場合の事業者・労働者への継続的支援はどうするのか、解除された場合には次なる「第4波」にどう備えていくのかなども不明瞭のままです。その代わりに聞こえてくるのは、政府の指示に従わない場合の罰則付きの法改正ばかりというのでは、順序が完全に逆としか言いようがありません。
◆推計非公表の意図
さらに厚生労働省は、毎年末に出していた出生数や死亡数などの人口動態統計の年間推計を、昨年は非公表にしました。コロナ禍により推計が難しいというのが理由のようですが、コロナ禍での出産支援や超過死亡に関する政策議論は今だからこそ行うべきものです。そのための基礎的な資料となる推計も示さない政府には、長期展望の議論に背を向け、とにかく嵐が過ぎ去るのを待つだけという姿勢が見て取れます。
すでに感染発生から1年が過ぎようとしている段階でこのような無為無策が続く以上、国民の善意に頼った感染防止にも限界があり、収束を困難にしています。
◆罰則よりまず支援
緊急事態宣言の効果がなかなか認められない中、政府は罰則付きの国民の権利制限強化で事態に対処する方針を採ろうとしていますが、真っ先に必要なのは罰則より支援と展望の提示です。
時短に応じない店舗が出てくるのは生活が成り立たなくなるからであり、罰則だけを強化するやり方ではなく、一部補償などの生活支援がまず必要です。労働者も同じです。店舗の休業や時短で仕事が減少する日雇いやアルバイト労働者への支援は全く行き届かず、立場の弱い労働者に困窮が集中しています。
また、持続化給付金と家賃支援給付金は、申請締め切り最終日の15日に急きょ1か月間の申請期限延長が発表されましたが、その後の支援をどうするかは不明瞭です。今後の長期的な感染展望と防止策、具体的な支援策を明確にして初めて、事業者や労働者の十分な協力が得られると考えます。
18日に開会する通常国会では、再び閣僚らの逃げの答弁と強引な政府与党案採決が予想されますが、菅政権の支持率は1月に入っても急落が続き、もはやこの国会中に退陣するのではないかとの声も大きくなってきています。罰則よりまず支援、そして検査拡大など感染防止を掲げて、受け皿となるべく活動して参ります。
スタッフ日記 「迫りくるコロナ」
奈良に住んでいると新型コロナ感染者数が二桁台前半で推移しているせいか、対岸の火事ではありませんが、少しだけコロナ問題が身近な問題ではないような感覚がありました。
ところが先日、娘の携帯メールに勤め先の方が感染したと連絡があり、私にその詳細を教えてくれました。
驚いたのは、その方が新型コロナウイルスに感染した時期です。なんと発熱があったのが昨年末で、発熱の翌日に受けたPCR検査で陽性反応が出ていたのです。
結果が陽性と分かっていたのに関係者に報告があったのは年が明けた1月に入ってから。一般的に感染して発熱などの症状が出るまで10日から2週間とも言われていますが、だとすれば私の娘を含め同じ職場で働かれている方全員が濃厚接触者にあたった可能性もあり、最悪の場合クラスターが発生してもおかしくない状況だと感じました。
身近に祖母がいる娘は心配になって奈良の保健所に相談したところ、感染実態の報告は無く今すぐにはPCR検査の対象になりません、と言われ担当者に事情を聞くと、感染者が県外在住の方なので他府県の保健所から奈良の保健所に連絡が来てからの対応になるとの回答だったそうです。しかし、事情を考慮していただき娘も翌日にはPCR検査を受けることができて結果は陰性で安心していました。
現場は懸命に目一杯の対策をされています。コロナを軽く考えずに感染すれば自分だけではなく他人や身内にも感染し、重症化になる場合もあるものだと考え日常生活における行動を考えなければならないと強く感じました。(よっちゃん)