第909号 人口減少を乗り越える

2019年11月23日 (土) ─

 私は今、交通事故により入院中で、皆さまに大変なご心配とご迷惑をおかけしておりますが、徐々に快方に向かっており、月内には退院できるかと思っております。病室では、今までなかなか読む時間が取れなかった書籍や資料を読み込んで勉強し、国会復帰へ備えております。

◆人口減少を繰り返してきた人類
 その中でも、歴史人口学をご専門とされる、静岡県立大学学長の鬼頭宏先生の学説には大きな関心を持ちました。産業革命による近代化以降、世界の人口は右肩上がりに増加し、それが経済力、ひいては国力と同一視されるようになっていきました。それゆえ、明治以降の日本の国是も、近代化とともに、「産めよ増やせよ」の人口増加政策の推進でした。

 しかし、歴史的に見ると、人類は人口が増加する時期と、停滞・減少する時期を繰り返しつつ、それを乗り越えてきました。鬼頭先生によると、日本も、今まで3回の人口の停滞・減少時代を経験し、それは縄文時代の後半、鎌倉時代、江戸時代中期に起こっています。

 縄文時代後半は、狩猟採集社会が、気候の寒冷化により打撃を受け、人口が減少しました。その後、稲作が全国に広がり人口が増加しましたが、農業生産力が頭打ちになると人口増加も止まり再び減少に転じます。室町時代以降、市場経済が全国に広がると、江戸時代初期にかけて経済が活発化し、人口が再び増加しました。しかしそれも、鎖国による経済活動の停滞や、国内開発の限界から、江戸中期以降、人口増加は頭打ち、減少になっていったのです。

 ヨーロッパでも、傾向は同じです。人口変動のパターン、つまり、多産多死、多産少死を経て、少産少死へと至る傾向を繰り返しています。現在、少子化は先進国共通の課題であり、欧米諸国でも、長期的に見て出生率は低下傾向です。これは、先進国自体が、人口を増やすことで大量消費し、経済を回す近代的システムの転換期に入ったことを示しているのではないかと思われます。

◆ポジティブに人口減少を捉える
 現在、日本は4度目の人口減少期に入りました。政府は巨額の予算を使い、少子化対策を進めていますが、出生数は加速度的に減少する一方です。2019年の出生数は、90万人を下回ることが確実です。今までの、単に子どもを持つ家庭への支援だけを進めても限界があります。格差を是正し、若者の消費を活性化させて、子どもを持てる環境を整備すべきです。また、東京の出生率は全都道府県中最低です。住居や教育費用の問題が背景にあると思われますが、一極集中が少子化を招いている面もあると思います。地方への分散も、少子化の鍵を握ります。

 そして、これからは、明治以降採ってきた、単純に人口増加に依存する経済成長を目指すのではなく、人口減少を前提として、それを乗り越える政策が必要です。例えば、全世代を通じて一人一人の能力を高めることに大胆に投資し、労働生産性を向上させていくことなど、文明の転換期を見据えた、新たな発想に基づいた政策の推進が必要ではないかと思われます。人口の減少を新しい社会へのステップとしてむしろポジティブに捉え、新たな仕組みを提案していければと考えています。

 

スタッフ日記 「令和になったので…」

 冒頭から大変気が引けるお知らせですが、今年の祝日は11月23日の勤労感謝の日が最後です。24日以降にお読み頂いている皆さん、いまさらの話で本当に申し訳ありません…。

 ただ、これで終わりではないような…。そう思われる方もいらっしゃるかもしれません。そうです、昨年まではまだ12月に天皇誕生日が控えていたのですが、新しい天皇陛下が即位されたため、天皇誕生日が12月23日から2月23日に変更になり、今年の12月23日は平日となったのです。

 12月23日、何しろクリスマスの直前です。イブはご家族や大切な人と過ごすけれど、23日はお休みを利用してお友達とパーティー、という方も多かったのではないでしょうか(その昔コンビニで働いていた時、売り上げそのものは24→23→25の順でしたが、23日はパーティー需要で客単価の高くなる大切な1日でした)。また、学校が冬休みに入るタイミングのため、お子さんをお持ちの方は特別な予定を立てることもあったかもしれません。

 30年間慣れ親しんだ祝日なので、すこし戸惑う向きもあるかもしれませんが、予定を変えなくては!という方はまだひと月あります。今年は直前の21日・22日が土日なので、そちらを利用するとよさそうです。

 最後に良いニュースを1つ。令和最初の天皇誕生日、来年の2月23日は日曜日、つまり振替休日で翌日も休日。ということは2月22~24が三連休になります。全くの偶然ではありますが、初めての、というところを加味すると、ちょっとしたプレゼントみたいで素敵ですね。(シズ)

第909号 人口減少を乗り越える