第896号 物語を示せ!
立憲民主党、国民民主党は2度の党首会談を経て、衆参両院での統一会派結成に合意しました。
◆党合流には高い壁
先の参院選は、有権者の既存政党への不満が棄権という投票行動につながった結果、投票率は5割を切り、与党が改憲に必要な3分の2の議席を下回る一方で、野党も思うように議席は伸ばせず、勝者不在と言える選挙となりました。
危機感を抱いた野党首脳は統一会派結成に踏み切りました。2年前の衆院総選挙で崩壊した野党が再編の道へと歩み出す重要な局面であり、流れそのものは評価しますが、私は、今後についてはまだ、楽観視出来る状況ではないという認識です。
統一会派の結成は国会の中での運営の話であり、野にいる野党系の浪人生、ひいては所属政党がなくなってしまった無所属で活動を続ける者たちにとっては、何も事情は変わりません。
すなわち、一つの政党へと合流を果たさない限り、浪人にとっては選挙への不安定な状況は何ら好転するものではなく、来たるべき衆院選で野党がまとまって戦う態勢にないことは明らかです。そして、党そのものの合流については、まだまだ目指すべき国家像や基本政策のすり合わせなど超えなければならない壁があります。
◆野党新勢力の台頭
もう一つの課題として浮かんでくるのが、野党の一角を崩し多極化に拍車を掛けている「れいわ新撰組」と「NHKから国民を守る党」です。とりわけ、200万票を超える比例票を獲得したれいわには、かつての民主党、民進党支持者で、政権転落後は支持政党なしの無党派に転じていた、「リベラル保守」と呼ばれる方々が、新たな受け皿と考えて投票した分析結果が出ています。
野党新勢力の台頭は、既存の野党、保守政党に不満を抱える有権者が流れ出した結果であり、れいわの今後の展開次第では、野党の枠組みが大きく変わる可能性があると感じています。
◆新しい物語の必要性
れいわは次の衆院選で100人の擁立を目指すとしていますが、小選挙区での戦いが中心となる衆院総選挙は、極めて緻密な選挙活動が礎となります。
それには、地道な政党としての基盤、組織作りが求められます。現在の立民、国民のバックオフィスたる政党の職員は併せれば100人近くになりますが、一朝一夕では達することの出来ない政治技法を熟知した職員の育成には少なくとも10年はかかります。その意味で、新勢力が小選挙区で一気に勝てる体制を作るのは容易ではないのは明らかです。
そこで、立憲・国民の地方県連にまで及ぶ人材を生かしたバックオフィス機能、そして、時代に応じた有権者と直接の双方向の交信を行うれいわ、といった新勢力が「一体」、「一丸」となって、自民党に対抗できる新しいうねりを作り出すことが必要です。
すなわち、既存の野党には無い「新しい物語」、有権者にワクワク感を与える新たなストーリーテリングを行えるかが今後の野党再編、ひいては政権交代に向けての重要なポイントとなると考えています。
新しい物語を示せるのか否か、傍観者ではなく自立的かつ能動的な行動者として、取り組んで参りたいと思っています。
スタッフ日記「かき氷の研究」
夏の風物詩と言えばやはり夏祭り。最近、いくつか地域の夏祭りに行く機会がありました。焼きそば、たこ焼き、フランクフルトといった定番の屋台がずらりと並ぶ中、どうやら人気ナンバーワンは、冷たく甘いかき氷のようでした。
かき氷は平安時代から食されていた記録があり、奈良市にはかつて氷の貯蔵庫であった地に、氷の神を祀る神社も存在します。今も昔もかき氷は夏の楽しみですが、最近は最新鋭かき氷機を使って氷を薄く細かく砕く、「ふわふわかき氷」の登場など、かき氷の世界も更なる進化を遂げています。
祭りでは僕も行列に並び、定番のイチゴ、レモン、メロン、みぞれなどのシロップの味に迷いながら、さっぱり味のイメージのあるレモンを注文しました。いつものようになんとなくレモン味のような気がしましたが、実はかき氷のシロップの味は一つだけで、それぞれのフルーツに対応した香料と色をつけているので、脳が持つイメージにより錯覚を起こして違う味に感じるのだそうです。そういう意味では、かき氷は想像力を駆使して味を楽しむクリエイティブな食べ物と言えます。
定番以外にも、バナナやグレープ、マンゴーなど、様々な色のフルーツに対応したシロップが出て来ています。しかし、最近よく見かけるブルーハワイ味というのは何をイメージして味を感じているのでしょうか?青色の甘いフルーツというのはなかなか思いつかないので、ハワイの青い海、白い雲のイメージが何か独特の味を私たちに感じさせるのでしょうか?と、すると一種の社会心理の問題でもあり、かき氷をめぐる考察も学問対象として奥が深そうです。(アタリ)