金融庁は、老後の生活を送るためには年金だけでは不十分で、別途2000万円もの貯蓄が必要になるとの報告書をまとめました。

◆火消しに走る政府与党
　金融庁の報告書は、少子高齢化が進む中で、誰もが疑問を抱いていた年金制度についてのリアリティある試算であり、政治が直視しなければならない現実を示すものです。現役世代の手取りに対する年金支給額を示す所得代替率は、現在の60%程度から、将来的には50%程度へと低下することが見込まれ、生活が苦しくなることは明白です。事実を踏まえた上で、何が出来るかを議論するのが政治の役目です。

　ところが、この報告書に対し、政府与党は真正面から向き合うどころか、自民党は誤解を与え、不安を招くとの理由で撤回を要求し、麻生太郎金融担当大臣も、政府のスタンスとは異なることを理由に、報告書を受け取らないと述べています。

◆政権の隠ぺい体質が露呈
　私は、麻生大臣が報告書を受け取らないとした件の是非について、金融庁に直接問い合わせました。結果、報告書は大臣の諮問により金融審議会のワーキンググループがまとめたものであり、大臣自らが意見を求めた事項について、その報告を受け取らないとしても、それは大臣の判断次第であって、違法ではないとの回答を得ました。

　しかし、この論理が通用するのなら、大臣の指示で各省庁がまとめたデータや今後の見通しについて、政府に都合の悪い報告は大臣の判断次第で採用しないことが許されることになります。結果として、政府に都合の良い報告のみを参考にして、国民の実感から外れた政策が実行されたり、ひいては真っ当な国会審議さえ不可能になりかねません。違法ではなくとも、不当であることは明らかです。

　今回、報告書を「無かったもの」にしようとする政府与党の動きは、公文書改ざん、不正統計などで、都合の悪い事実は隠蔽し、真正面から取り組まなければならない問題は先送りしてきた、安倍政権7年間の体質そのものと言えます。

◆争点としての年金
　金融庁報告書への対応についての批判が高まる中、総理も議席を減らすリスクを恐れたのか、いったん膨らんでいた衆院解散による衆参同日選挙の雰囲気は､急激にしぼみつつあります。

　参院選は7月21日投開票が濃厚ですが、金融庁がこの時期に年金問題を問いかける報告書をまとめたことは、選挙直前に争点を明確にする大きな意義があったと思います。私は、高額所得者が優遇されている年金・医療などの社会保険料控除を見直すなどして、消費税増税分に代わる財源を確保し、税制を抜本的に見直すべきとの案を2年前より訴えていますが、こうした独自の案を各政党、各候補者が出し合い、討論することが重要です。また、ただただ政府を批判するだけでは国民の信頼は得られません。年金問題に真正面から取り組み、税も含めて給付と負担の関係性を明らかにすることが、未来の国民生活に対しての責任であります。

　全ての人の将来の生活にかかわる年金などの課題によって参院選への関心が高まり、正当な議論が評価される選挙になることを期待します。

 

スタッフ日記「9秒97」

　先日、全米大学選手権100メートル決勝でサニブラウン選手が日本記録を出し、その記録が9秒97。準決勝では、追い風参考記録ながら9秒96をマークしていました。これまでの日本記録は桐生祥秀の9秒98。追い風参考記録としては、桐生が9秒87、多田修平が9秒94と、あのウサインボルトが9秒58の世界記録を出したあの時の衝撃から思うと、陸上短距離の日本人選手の層の厚さには驚くべきものがあります。2020東京オリンピックでの個人種目、団体としてのリレーにも大きな期待を持たせてくれます。

　現在フランスではワールドカップ女子サッカーが行われ、9月には日本でワールドカップバレーが開催されます。そして、前回の大会で強豪南アフリカを破り大いに注目を集めた、ラグビーワールドカップが9月20日に日本で開催されます。「スクールウォーズ」で有名になった山口良次監督が率いた伏見業高校が全国優勝、そして新日鉄釜石が7連覇を成し遂げた頃からのラグビーファンである私にとって楽しみな１年です。

　2020東京オリンピック、パラリンピックへと日本代表の座を目指していろんな種目の選手たちが、センターポールに日の丸を掲げることをめざし日々自らを鍛え上げています。東京大会の成功を心から祈ることしかできませんが、ぜひ私たちファンを楽しませてください。

　一方、政治の世界では、老後2000万円問題や、全く大義のない衆議院解散から、参議院とのＷ選挙の風が吹き止んだり、10月から消費税10％への値上げがほぼ決まるなど、全く楽しい話が聞こえてきません。

　ワクワク、ゾクゾクするような政治が展開されることを願いながら、そんな状況を作るためにも参院選挙は全力投球！！（スギ）