第610号 廃炉機構創設を提言
15日、第185臨時国会が召集されました。その課題の一つに東京電力福島第一原発の汚染水問題があります。この問題の本質を突き詰めると、東電救済スキーム(仕組)の抜本的見直しにつながると私は考えます。
◆東電救済スキーム
現在の東電救済スキームは、2年半前の事故直後、2011年8月に成立した原子力損害賠償支援機構法(支援機構法)によって定められています。そこでは、支援機構を通じた公的資金投入と他の電力会社の費用拠出で、東電の破綻を回避し、原発事故の賠償が滞らないようにすることが目的でした。
なぜ当時の民主党政権は東電の破綻処理を回避したのか。
東電が発行する社債(電力債)は当時約5兆円に上り、かつ電気事業法上、電力債は他の債権に優先して弁済を受けられることが定められています。仮に破綻処理をした場合、発電設備等の売却益は電力債保有者に優先的に割り振られ、東電を法的整理しても、資産売却益は賠償原資に回すことができないという問題がありました。
◆提言:廃炉機構の設立
しかし、東電は、事業継続と事故処理の間で深刻なジレンマに陥っています。事故処理はしなければいけないが、企業として存続するために赤字を垂れ流すわけにもいかない。その結果、汚染水対策費の支出を躊躇し、対策が後手に回ってしまうという悪循環が続いています。
安倍首相は「汚染水問題は東電任せにせず、政府が前面に立つ」と宣言していますが、9月10日の閣議決定では、政府が汚染水対策に予備費を投入できるのは「技術的に難易度の高いもの」に限られています。
安倍政権が進める凍土遮水壁は前例がなく、この基準に該当します。しかし、汚染水対策には多重防御が必要で、粘土壁による「第二壁」も同時に作るべきです。この粘土壁は在来工法で「技術的に難易度が高い」とは必ずしも言えず、国費投入は難しいと考えられます。
この問題に加え、現場作業員の人材確保、東電の株主責任・債権者責任の明確化等の問題にも取り組む必要があります。
以上の問題に対処するため、私は東電の救済スキーム見直しと廃炉機構の創設を、党の対策本部において提言しました。
事故処理や廃炉に関しては国が関与する新組織(廃炉機構)を作り、東電から切り離す。そこに内外から人材・技術を集め、資金を投入する。東電の法的整理・発送電分離を同時に行い、発電・小売部門を売却し、その売却益を賠償や廃炉費用に充てる。さらに、送電会社として生まれ変わった東電の収益の一部を賠償に回す、という枠組みです。廃炉機構は、今後50基にも上る国内の原発の廃炉作業も担うことになります。
2年前には債券市場の混乱が懸念されましたが、すでに原発を持つ他の電力会社8社の社債発行が復活するなど、市場は安定しています。また、電力債が賠償に優先する問題は、立法的な対処等が考えられます。
支援機構法とその付帯決議では、2年をめどに枠組みを見直すとされていますが、政権は着手していません。首相は東京五輪に向け、原発問題に取り組むことを国際公約しました。東電救済スキームの見直しこそ、踏み出すべき重要な課題です。(了)
まぶち@国会「吉野家」
10月11日に衆議院に吉野家が開店しました。隣にはかけそば1杯210円の蕎麦屋もあり、お財布に優しいツートップの誕生です。
衆議院では5年ごとに議院運営委員会によって飲食店の公募が行われますが、業者の入替えはあまり行われませんでした。
先述の蕎麦屋を除けば、国会内と議員会館内の食堂は概ね1000円前後と毎日食べるには少々厳しい価格帯のメニューが多く、「お昼問題」はちょっとした懸案でした。今回の吉野家は22.3坪で14席と通常の店舗よりも狭く、メニューも牛丼、牛ねぎ玉丼、豚丼、牛重、カレーと限られてはいますが、280円で1食食べられ、500円で大盛に味噌汁とサラダもつけられるとなれば魅力的なことに違いはありません。
実は吉野家がアメリカ産の牛肉を使っているということで、出店に際しちょっとした議論がありました。6月19日の衆議院農水委員会では大臣と政務官が揃って「国産の農産物をできるだけ活用していただきたい」、「国会バージョンで国産の牛肉も使っていただけるような形にできればありがたい」と答弁しています。その結果用意されたと言われているのが国会限定メニューの牛重です。
この牛重、国産牛を使っているだけあって、味噌汁とおしんこ付きで¥1200、器も黒塗りのお重に入っています。その豪華さからか、一部の議員から「国会内だけで食べられるのはおかしい」という問題提起がされているようですが、経緯が経緯だけに吉野家に議論の矛先が向かうのは少しかわいそうな気がします。
ちなみに開店初日と2日目はお昼のピークを過ぎても行列が途切れない盛況ぶりで、噂の牛重は物珍しさからかいずれも13時半頃には売り切れていました。(了)