EU首脳会合の行く末

2011年10月24日 (月) ─

 23日のEU首脳会合で、結論が先送りされたとの報道と資本増強で大筋合意との二種類の報道がなされている。

 確かに、欧州銀行に対する資本増強等の検討に要する時間的余裕確保のために17日から一週間延期してのEU首脳会合だけに、市場が結論先送りについての失望が広がるのではないかとの予測もあったが、すでに先週末より26日に再度開くとのメッセージが流れていた。

 10月12日にバローゾ欧州委員会委員長が示していたロードマップで、論点は(1)ギリシャ問題への対応、(2)ユーロ圏の危機対応能力の強化、(3)資本増強等による銀行システムの強化、(4)安定的な成長を促進する諸施策の前倒し、(5)強固な経済ガバナンスの構築、の五分野が示されている。

 この中でも、とりわけユーロ圏の危機対応能力の強化としてEFSF(欧州金融安定基金)の融資枠の拡充と、資本増強による銀行システムの三段階強化が注目されていた。

 結果は、EFSFの4400億ユーロの拡充は結論が出ず、一方資本増強は、バローゾ工程表通り、自力増資、公的資金注入、EFSFからの注入という三段階で進むことの合意は得られたようである。

 報道の、「進展」とされた部分は資本増強の合意である。そして、先送りとされた部分がEFSFの再拡充。

 ここで重要なのは、資本増強はすでに織り込んではいるがEFSFの拡充は果たしてどのように決着するかにより市場の不安定化が増すのではないかという点だと思う。

 GDP規模でユーロ圏3位のイタリアの国債発行残高は約1兆8千億ユーロ。ギリシャ問題に大きく影響を受ける可能性のPIIGS(ポルトガル、アイルランド、イタリア、ギリシャ、スペイン)の中でもこのインパクトを想定すると、EFSFの再拡充がそれこそ米国の主張する5倍規模、2兆ユーロにまで届くようであれば一安心だろうが、独仏の議論は簡単に収まりそうにない。

 26日に再協議は想定の範囲であるが、このEFSFの拡充については不透明感が漂う。

 リーマンショックと比べて今回の欧州危機は、金融ではなく財政の問題でありリスクの所在が明らかである、と言う点では全く異なる。しかし今回は先進国経済への直撃よりも新興国経済に対するクレジットクランチの発生が懸念されるため、影響がどこまで広がるか予測がつかない。

 そしてさらに最大の問題として、リーマンショックは金融緩和と財政出動の余地がまだ世界的にはあったということだが、今回は新興国がインフレリスクに直面しており金融緩和の余地が小さくかつ財政危機が原因のため、財政出動の余地も小さいということ。

 我が国の取るべき手立てが、リーマンの時のように手さぐりではないが、相当に周到に準備が必要なのは言うまでもない。

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