第847号 沖縄翁長知事の思い

2018年8月11日 (土) ─

8日、沖縄県の翁長雄志知事が急逝されました。

◆保守と革新の狭間で
 翁長知事との出会いは私が沖縄担当大臣時代に、那覇市長として沖縄振興策の県市長会代表としての要望を伺った時でした。元自民党県連幹事長を務めるなど、沖縄の保守代表格とされる政治家でしたが、2014年の沖縄県知事選挙では、自民党と袂を分かち、辺野古への米軍基地建設反対を唱え当選。以降は、一貫して政府の進める基地建設反対の姿勢を崩さず、前知事の辺野古埋め立て承認の取り消しで国と裁判で争いました。敗訴した後も、今年7月末、改めて埋め立て承認を撤回する方針を示すなど政府方針への反対姿勢を貫かれました。基地を抱える県民にとっての「受益と負担の公平性」を真摯に訴える、沖縄人としての魂を、前面に掲げる政治家として、最後まで闘い抜かれました。謹んでご冥福をお祈りすると共に哀悼の誠を捧げます。

◆知事が対峙したもの
 翁長知事の懸命な取り組みの一方で、現実は新基地の建設を止めることは困難と言わざるを得ない情勢でした。一連の訴訟では最高裁で国が勝訴しており、知事が改めて承認を撤回する方針を示しても、司法がそれを有効とするのは難しいと思われます。また、今年2月の辺野古を擁する名護市長選挙でも、与党系候補が勝利するなど、政治環境も知事にとっては厳しさが増していました。翁長知事が最高裁判決後も基地建設反対の姿勢を貫かれたのは、保守系政治家として、ご自身の命をも賭して守らなければならない県民の願いを重く受け止められたからだと思います。

 基地の負担軽減については真摯な対話が求められているにもかかわらず、政府内には「沖縄軽視」の姿勢が散見されます。閣僚の相次ぐ失言や沖縄振興策をぶら下げれば収まるなどの安易な便法に依存していないか、改めて立ち止まって考えなければならない時です。沖縄担当大臣時代の、沖縄振興自主戦略交付金交付の責任も踏まえ、基地の負担軽減と本土に住む私たちが得ている受益との公平性に、更に踏み込んだ考え方が求められているのだと感じます。

 翁長知事も、社会全体の沖縄の現状への無理解、太平洋戦争やアメリカによる占領統治の歴史、そしてその結果として、日本の国土面積の0.6%に過ぎない沖縄県に、在日米軍専用施設の約74%が集中し、県民が大きな負担を強いられ続けている不合理への怒りなど、県民に寄り添えば寄り添うほど元自民党県議の立場を超越して、基地建設反対へと駆り立てられたのではないかと想像します。

◆沖縄の基地負担に向き合う
 日本の安全保障を語る際、日米同盟が基軸になるのは言うまでもありません。しかし、米軍の存在による沖縄の負担の現実を十分に理解しようともせず、言わば「安全地帯」といえる本土から基地について大所高所で論じ、補助金や経済振興の話でお茶を濁しているだけでは、永遠に本土と沖縄の溝は埋まりません。所管した立場として普天間移設による危険性の除去は絶対に必要だと思いながらも、一方で沖縄県民にとっての受益と負担の公平性を守る覚悟が求められていることを改めて実感し、基地負担のあり方と安全保障の議論に正面から真摯に向き合っていくことが、翁長知事の遺志に沿うものだと肝に銘じています。(了)

 

森ちゃん日記「観光地における渋滞対策」

 やさしい灯りが古都の夏の風物詩となった、なら燈花会が今年も開催され、昨年を上回る100万人の来場者を見込み、閑散期における奈良を代表するイベントとして賑わっています。

 今年5月、県と市が奈良公園周辺の渋滞緩和対策の社会実験を行いました。観光客の増加に伴う交通渋滞は、奈良県としても長年の課題ですが、一方でJR奈良駅周辺の駐車場には比較的空きが多く、中心部へのマイカーの流入を抑制するため、JR奈良駅駐車場を利用した方にバス一日乗車券を無料でプレゼントする企画で実施されました。県道路環境課によると、今回の実験で連休中には約半分近く空いていた駐車場の利用率は9割まで上がり、大宮通りの渋滞状況も時間帯によって8割減少し、一定の成果があったと言えます。今後は、地元も含めた協議会で実施回数の増加も検討し、来年4月からの開業を目指す県庁東のバスターミナルと共に、観光中心部の渋滞緩和策に一石を投じる事になりそうです。

 文化財の保存から道路の拡幅が難しい奈良の課題として、3月に事業着手が決まった京奈和道の奈良IC設置、平成30年に完成予定のJR奈良-郡山間の新駅など、他府県からのアクセスに大きな変化が訪れる中、パーク&ライドによる渋滞緩和を広域的に議論し“また来たくなる奈良”を目指すことが重要です。

第847号 沖縄翁長知事の思い