第776号 大臣の資質とは
衆院予算委員会の論戦が行われる中、金田法務大臣、稲田防衛大臣の答弁をめぐり、改めて「大臣の資質」が問われています。
◆資質問われる両大臣
金田大臣は、いわゆる「共謀罪」を含む「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法案の担当大臣であり、これまで何度も廃案になってきた共謀罪について説明する立場にあります。
今回、そうした立場にありながら、法案の必要性など基本的な事項を説明することができず、また、「法案提出後に議論すべき」とする報道機関向けの文書の作成を指示するなど、職責放棄と言わざるを得ない行動をとっています。
また、稲田大臣については、防衛省が当初「破棄した」と説明していた南スーダンでのPKO活動にあたった自衛隊の現地部隊の「日報」が、実は破棄されておらず、その中に現地での武力衝突の様子と「戦闘」という記載がされていたことが問題視されています。
自衛隊は、南スーダンで「戦闘行為」が発生していないことを前提としてPKO活動を行っており、一連の経過は、派遣の前提を揺るがしかねない事態を隠ぺいしようとしていたと疑われても仕方ありません。
仮に稲田大臣が事実を把握していなかったのならば、文民統制(シビリアンコントロール)を担う防衛大臣としての責任が問われます。
◆官僚組織の中での役割
日本の官僚組織・人材は世界的に見ても優秀と言えます。しかし、裁量と既得権が結びついた時、その力が、国民の生活ではなく、既得権を守る方向に働く危険性が存在します。
そのために、国民から直接選ばれた国会議員(もしくは総理から選ばれた民間出身の大臣)がトップとなり、組織をグリップし、組織が国益・国民の利益のために働くようにする役割を担っています。
仮にその大臣が政策内容を理解せず、官僚に使われるがままになっているのであれば、職責を果たしているとは到底言えません。
◆組織ガバナンスの能力
巨大組織である官庁を、数名の国会議員で完全に掌握するのは至難の業です。
こうした問題意識から、私が国交副大臣、国交大臣の際には、省内から中堅若手官僚を集めて「政策審議室」という、企業であれば社長室や経営戦略室にあたる部署を設け、政務三役の目となり耳となってもらうとともに、関係部署との調整の役割を担わせました。この時、会社経営者としての経験が生きました。
組織の長たる大臣として必要な能力は多々ありますが、その中でも最も重要なのはこの組織ガバナンスの能力と考えます。
野党やメディアからの批判を浴びながら、大臣の職責を全うするのは大変な仕事です。そのため、私は国会審議で揚げ足取りのための質疑はしません。しかし、金田・稲田両大臣の答弁を見るに、ガバナンスの能力があるのか疑問を持たざるを得ないのも事実です。
自民党は、来週、予算案の採決に必要な中央公聴会の開催を予定していますが、両大臣の資質を問う審議を回避するために採決を急ぐのであれば本末転倒です。
安倍内閣には、緊張感ある審議への対応と、大臣に求められる資質とは何か、自問と自省を求めたいと考えます。(了)
スタッフ日記「幻の初選挙」
2016年、18歳選挙権が実施されました。
1997年生まれの私にとって、7月10日投票日の第24回参議院議員選挙が、私の人生初の選挙となるはずでした。けれども、結論から言えば、投票には行かなかった、いや、行けませんでした。実は、投票用紙が届かなかったのです。
6月末、人生初の選挙が近づきます。東京で転入届を出してからまだ4か月経過していなかったので、投票用紙は実家に送られてくるはずです。しかし、実家から一向に連絡が来ません。気が付けば投票日直前です。とうとう自分から連絡してみました。
「え?俺の分は届いてないってどういうこと?」
事情がよく分からないまま、結局投票用紙は届かず、そして選挙は終わってしまいました。 腑に落ちないので、総務省のホームページで改めて確認してみました。
やはり選挙人名簿からの登録抹消について、「転出したときはすぐには抹消せず、転出したことを表示しておいて、転出日から4カ月を経過したときに抹消」とあります。
7月10日の時点では、地元の役所に転出届を出してから4か月未満です。やはり実家に送られてこなければおかしかったのです。
家族が見逃したのかと再三確認しましたが、全員分の投票用紙が封筒にまとまって送られてきたため、見逃すわけがありません。
一番考えられるのは、地元の選挙管理委員会のミスですが、その時に役所に確認しなかったため、今となっては謎のままで、私の人生初の選挙は幻のものとなって幕を閉じました。(イシノマキ君)