第705号 安保強行採決に憤る
政府提出の安保法案が、参議院平和安全特別委員会での強行採決を経て参院本会議で可決し、成立しました。
◆深まる疑問と矛盾点
安保法案は衆院での強行採決後、参院での審議が続いていましたが、次々と指摘される問題点に対しての閣僚の答弁は二転三転し、法案への疑問は深まるばかりでした。
例えば、集団的自衛権の行使に関する説明で、政府は当初、中東ホルムズ海峡での機雷掃海を念頭に置いているとしてきました。しかし、委員会審議の最終盤で安倍総理は、このホルムズ海峡の件について「現在の国際情勢に照らせば、現実の問題として発生することを具体的に想定していない」とこれまでの説明とは真逆の、法案の必要性の根幹を揺るがすような答弁を行いました。
また、政府は、紛争地域から日本人を輸送する米軍の艦艇を自衛隊が防護することを例に挙げ、法案は日本人の命を守るために必要であると説明してきました。ところが、最近になって中谷防衛大臣は、「邦人が輸送されているかは判断要素の一つだが絶対的なものではない」と、これまでの説明と食い違う答弁を行っています。
さらに政府は、法案が成立した後、南スーダンで展開中の国連平和維持活動(PKO)の任務に、武器を使って他国の部隊を助ける「駆け付け警護」を加える方向で検討していますが、武器の使用を正当化する条文上の根拠が無いと指摘されている今回の安保法案をここで運用するのは無理があります。
このように、疑問点と矛盾点がたくさんあるにもかかわらず、それについての議論が十分に行われないまま、安保法案は強行採決されました。
◆安倍安保法廃止を目指す
多くの問題と、“今国会での成立には国民の7割近くが反対”という世論調査の結果を黙殺する形で政府が採決に踏み切ったのは、「夏までに安保法案を成立させる」と総理自身が交わしてきた米国との約束を守るために他なりません。
この法案の本質は、我が国が集団的自衛権を行使して、自衛隊が米軍の補完・支援部隊として世界中に展開出来るようになるということです。自衛隊の前身、警察予備隊の時代から、米国は自衛隊(警察予備隊)を指揮下に置くことを画策してきた、という指摘がありますが、その意味で、今回の法案の成立は、米国にとってもある種の「悲願」だったと言えます。
こうした本音を隠したまま、その場しのぎの説明を重ねた結果、この安保法案は矛盾を抱えたまま審議を終えるに至りました。国民に対して全く不誠実な態度の法案審議だったのは明白です。
法案は成立しましたが、運用などに問題がある場合には、今回の法律を廃止する法案を提出して闘うことも出来ます。
引き続き外交防衛関係の委員会での追及を続けるとともに、「安倍安保法制廃止法案」の提出も視野に入れて政府与党と対峙していく所存です。(了)
スタッフ日記「仲裁のはなし」
「ナンヤッ コラッー」
梅雨あけ間近の夕暮れ、混雑していた駅の階段近くで、ただならぬ怒声が響きわたり、周囲に緊張が走りました。
声がした方では、少し若い男性がサラリーマン風の男性に掴みかかっていました。僕は思わず駆け出してそのまま後ろから1人の背中を抱え、「あかん!あかん!」と言いながら、間に身体を割り込ませました。
気のきいたセリフなど思いつきませんが、こういう時の関西弁は角がなく便利です。「どうしたん?あかんがな」そう言うと2人はつかみ合ったまま僕の顔に注意を向けました。
当てずっぽうで「なんや!肩が触れたとか、そんなんかいな? 」そう尋ねると、サラリーマン風の男性が大きく頷きました。すると、若いお兄さんの方が「おっさんが当たってきたんや!」と言いだし、またケンカの続きを始めそうな勢いになってしまいました。
自分の発言のせいで火に油を注いでしまったことに驚きつつも、何とか言葉を尽くして仲裁を続けると、どうにか最後には2人で素直に詫びあい、帰っていきました。
安保法案の議論は今まで政治に関心のなかった人たちを含め、国民の中で大きな議論となりました。
政府の国会答弁では集団的自衛権を友人のケンカにたとえ、友達がケンカを吹っかけられたので加勢にゆくという話がされていました。
しかし憲法に明記されている「恒久の平和」を希求するこの国の一国民としては、戦争の当事者になるよりも和平調停を実現する、そんな平和的外交力を持つ未来を望んでやみません。(チュウ)