第690号 年金情報流出問題

2015年6月6日 (土) ─

 1日、日本年金機構は、年金情報を管理しているシステムに外部から不正アクセスがあり、年金加入者の氏名や基礎年金番号など、少なくともおよそ125万件の個人情報が流出したとみられることを明らかにしました。流出件数は更に増える可能性があります。

◆被害の現況
 今回の情報流出は、日本年金機構の職員が、コンピュータウイルスの仕込まれた添付ファイル付きのメールを端末で受信し、ファイルを開いてしまったために起こりました。コンピュータがウィルスに感染して、何者かによる不正アクセスが実行されたのです。

 漏洩したのは、基礎年金番号と氏名、生年月日、住所です。流出した125万件のうち、70万件は内規に定めるパスワードが設定されていましたが、残り55万件についてはその設定がなされていなかったこと、さらに個人情報を扱う端末とインターネットを接続する端末とが分けられていなかったことなどにより、被害が拡大したと考えられます。

◆徹底した検証を
 今回の事件では、今年1月に施行されたサイバーセキュリティ基本法に基づいて設置された「内閣サイバーセキュリティセンター(NISC)」が5月8日の段階で事態を発見し、年金機構に連絡しましたが、機構は29日にいたるまで機構全体で外部通信を遮断する措置を取らず、被害が拡大しました。また、塩崎厚生労働大臣がこの事実を知ったのは28日の事であり、事実公表はそのさらに4日後の6月1日でした。

 こうした関係機関の連携の不備が、被害拡大を招いたと言え、今後、基本法を踏まえたサイバー攻撃への対応・体制について、運用面を含め再度検証する必要があります。

 今回の事件により、個人情報を公的機関が一元管理する場合のリスクが明らかになりました。しかし、年金の最低保障機能を強化するためには、国が税と社会保障に関する情報を一元的に把握することが必要不可欠です。真に支援を必要としている人を特定しなければならないからです。データセキュリティ上はリスク分散(情報を一か所に集めないこと)が求められる反面、社会保障改革上は一元的な情報管理が求められるという二律背反がここにはあります。

 この矛盾する要請を果たしていく上で国の役割は極めて重いものですが、今回の件で公的機関の情報管理に対する国民の不安から社会保障改革が後退するようなことがあってはなりません。まずは公的年金制度への不信と不安を国民に与えた事を政府は重く受け止めるべきです。

 民主党としても単なる批判だけではなく、情報セキュリティの本質と社会保障制度に関わるシステム構築の議論を深めていく必要あります。

 党本部では、早速2日に「漏れた年金情報調査対策本部」を立ち上げ、現在、日本年金機構、厚生労働省、警察庁からヒアリングを行うなどの調査を進め、事実関係の詳細把握を行っているところです。しかし情報隠蔽と思われるような答弁などもあり、更なる徹底した調査と原因究明、並びに再発防止と被害拡大防止の策を講じるよう、強く政府に求めています。大切な年金に対する国民の不信と不安を払しょくするため、全力を尽くしていきます。(了)

 

スタッフ日記「美味しいをつくる」
 ここのところ、人里を少し離れると田んぼ一面に水がはられ、また陽が落ちる頃には蛙の鳴き声が聞こえてきて夏の始まりを感じます。奈良はいま田植えの最盛期ですが、母の実家が農家だった私は、子供のころ、この時期になるとよく手伝いに駆り出されていました。

 一般には米づくりの一番始めが田植えであるように思われがちですが、その前にもいくつかの工程があります。だいたい4月から苗を育て、苗が病気にならないように徹底して管理する作業などをしています。

 その前準備の中で最も大変なのが、籾蒔き(もみまき)と呼ばれる苗づくりでした。

 苗を育てるための厚さ4センチほどの箱に、土をのせ籾を蒔いて土を被せます。そしてそのA4用紙3枚ほどの箱、数にして1000枚くらいを、今度はハウスの中に一枚一枚丁寧に敷いていきます。

 祖父曰く、1ミリでも隙間が空くとそれが積み重なって大きなズレができ、病気の原因になることもあるとの事でした。にもかかわらず、幼い私は、ハウスの中の高温と指先の感覚がなくなるほどの仕事量のため、知らないうちに列を大きく歪ませてしまい、よく怒られていました。

 たくさんの人手が必要な作業のため、親戚はもちろん、近所の方々が籾蒔きの時期をずらしてお互いに手伝いに来る、という仕組みになっており、むら全体で取り組む一大イベントのようにみえました。

 そんな風に大切に大切に育てられた日本の美味しいお米と、そんな豊かな風景がこれからも守られていくよう願いながら、感謝を込めて今日もおいしくご飯をいただきます!(特命係長)

第690号 年金情報流出問題