第601号 民主党をたたき直す
参院選の厳しい結果を受けて、今後、民主党再生のために何をすべきか、選挙で全国を飛び回る中で頂いた意見や気づいた点を踏まえ、党改革のための私案を練っています。現時点で、まず取り組むべきと考えるのは以下の3点です。
◆地方組織の建て直し
まずは、地方組織の建て直しです。政党の足腰は、市議会議員、県議会議員などの地方自治体議員です。民主党は、減じたと言えど2千人を超える数の地方議員を擁しており、政党としての足腰の強さ、地力はあります。問題は、地方議員の力をどのように党全体の力に変えていけるかです。すでに、私が事務総長を務める党改革創生本部の提言に基づき、「地方自治体局」が設置され、これまで都道府県連を通じてしか行えなかった党本部と地方議員のやりとりが、党本部から直接行えるようになりました。意思疎通を直接行うことにより、党本部からの指示や情報提供、地方議員からの要望等への対応が円滑に行えるようになります。今後は、新たな仕組みを機能させ、他の改革と合わせて、民主党を、「国会議員中心の政党」から、地方議員も同じ立場で参画できる「国民政党」へ変えていく必要があります。
◆総支部長の見直し
次に、次期衆院選で候補予定者となる各選挙区の総支部長の見直しです。総支部長は、地方組織の核となるべき存在であるため、地方組織を建て直す意味でもその見直しは重要です。具体的に考えられるのは、公募や中立な第三者的選考委員を交えた開かれた手続きによる総支部長の選定です。新しい人材を迎えることで組織が活性化され、有権者により近い声を党運営や政策立案に反映することが期待できます。
◆基本政策の練り直し
また、党としての基本政策を練り直す作業も必要です。憲法については、民主党は2005年に「憲法提言」を作成し、環境権などの新しい人権や「公共の福祉」の明確化等を盛り込んだ憲法改正の考え方を示していますが、条文化まで至っていません。安倍政権が改憲を目指すことを公言している以上、対案となる民主党憲法試案の起草作業を進める必要があります。
さらに、民主党の政策の1丁目1番地である社会保障政策については、最低保障年金の創設や公的年金制度の一元化を掲げた年金制度改革について、現行制度からどのように移行させるのか、工程も含め、現実的な成案を得る作業が必要です。これまで長い年月をかけて構築されてきた社会保障制度を抜本的に改革し、新しい制度に移行させる作業は、極めてハードルが高いものです。しかし、民主党は、年金や子育て支援を含む社会保障制度改革を掲げて政権を取り、社会保障と税の一体改革に伴う混乱で下野しました。困難な作業でも、民主党は社会保障制度改革に真正面から向き合う必要があります。そうでなければ、社会保障で国のかたちを創るとしてきた党の名が折れることになります。
選挙戦で訴えた「暮らしを守る力になる」を実行するため、民主党をたたき直し、生まれ変わらせるため、現実主義の党改革に引き続き取り組んで参ります。(了)
スタッフ日記「日本文化の多様性」
天明屋尚(てんみょうや・ひさし)という現代芸術家がいます。生み出す作品はもちろんですが、私は何よりも彼の主張に感銘を受けています。
彼は「武闘派」という流派を立ち上げて自らの創作物を「ネオ日本画」と称し、これまでの日本美術、特に日本画の概念を打ち破るべく活動をしています。
日本の伝統文化というと、「ワビ・サビ」「禅」という静的な面に焦点が当てられがちで、俳句や枯山水に代表されるようなシンプルでそぎ落とした表現が評価されてきました。
しかし、そうした部分に偏りすぎた結果として、日本美術はだんだんと私たちの生活習慣や身体感覚から離れてしまったのではないか、というのが彼の持つ疑問です。古くは縄文土器から浮世絵、現代ならば刺青やデコトラ(菅原文太が乗りそうな装飾を施したトラック)、デコ電(装飾した携帯電話)とギャル達の過剰に盛るアイメイクなど、本来多様な顔を持つはずの「日本文化」を無理に「静的なもの」の中にまとめるのではなく、そうしたものを取り入れ、日本の心にもっと騒々しいリアルを取り戻して美術史をダイナミックに改変すること、それが彼の狙いです。
私がこの試みに強く共感したのは、これは日本の街づくりでも同じではないかと思ったからです。
よく「日本の街は駅を降りたらみんな同じ」という批判が聞かれますが、県や市、それどころか町ひとつ離れれば全く違う生活習慣やローカルフードが根付いているこの国で地域主権や観光立国を高らかにうたうのであれば、文化の多様性を確認し、差異を強調した独自の街づくりを考えなくてはならないと改めて強く感じています。(お松)