第600号 負担先行の社会保障改革 

2013年8月10日 (土) ─

今週、政府の社会保障国民会議は、社会保障改革の報告書をまとめ、首相に提出しました。

◆年齢別から負担能力別へ
 報告書は、これまで、年金・医療・介護分野に偏り、主として高齢者を想定してきた社会保障制度を、子育て支援も含めた「全世代型」に転換することを提言するなど、民主党がこれまで進めてきた改革を承継した部分もあり、その点については評価しています。 

 一方で、負担のあり方を、「年齢別」(給付は高齢者へ、負担は現役世代)から「負担能力別」に変え、高齢者にも応分の負担を求めることとしています。具体的には、70~74歳の医療費窓口負担の引き上げ、要介護度が低い「要支援」向けのサービスを介護保険制度から外すなど、高齢者にとって負担増となる改革が多く盛り込まれています。

◆改革の将来像は示されず 
 少子高齢化が進み、増え続ける社会保障費とともに、それを支える現役世代が減る中、社会保障における負担増は避けられない問題です。しかし、今回の報告書は、社会保障改革の将来像について「将来あるべき社会像を想定した上で、短期と中長期に分けて実現すべき」としながら、現行制度の改善に終始し、中長期の抜本改革や社会保障の将来像については言及がありません。国民の皆様にご負担をお願いする以上、将来的に持続可能な社会保障制度をどのように構築するのか、その道筋を示すのが政治の役割です。例えば、年金制度についても、非正規雇用の増加、低年金・無年金者の増加等の問題がある中で、これらに対応するため、公的年金の一元化や最低保障年金の創設をどうするのか、本来踏み込むべき抜本改革の議論が先送りされています。国民会議は有識者で構成される会議であり、政治が明確な意思を示さなければ、現行制度改善というマイナーチェンジにとどまることは当初から予想されたことです。それにもかかわらず、官邸が、抜本改革への強い意思を示さなかったことを踏まえると、安倍政権は社会保障改革に後ろ向きと言わざるを得ません。

◆遅すぎた三党協議離脱 
 昨年の社会保障・税一体改革に関する民・自・公の三党合意により、社会保障分野、税分野それぞれについて、三党で協議を行うこととされました。 

 しかし、昨年末の総選挙で自民党が政権を取ると、自公は、三党協議に消極的な態度をとり、参院選前には協議自体が開催されない状態が続きました。このような状況の中、今回、民主党は、「今後、三党合意を踏まえた議論ができないような社会保障実務者協議には応じない」とし、事実上の三党協議離脱を表明しました。 

 昨年の総選挙で圧勝した与党が、参院選でも議席を伸ばすことを見越して、協議に消極的になることは予想できたことです。政権を失った時点で、三党合意を白紙に戻し、国会論戦において是々非々で議論するという決断が、野党として出直す覚悟を示す上で必要だったのではないかと考えます。 

 いずれにせよ、報告書に基づき、今後、政府は制度詳細を詰め、関連法案を国会に提出します。国会論戦に場を移し、「社会保障の民主党」としての矜持を示していきます。(了)

 

スタッフ日記「お願い事は一つ」 
 「困った時の神頼み」という言葉があるように、人は苦しくなったり、家族の病気や受験など様々な時に「神頼み」をしてしまうものです。 

 もちろん私も今まで数えきれないくらいのお願いごとをしてきました。小さい頃は両親に「一生のお願いだから」と何度言ったことでしょう。 

 つい最近、京都にお願い事をかなえてくれるお寺があると友人に聞きました。ただし、そのお寺のお地蔵様にお願い事をするときは、出来るだけ欲張らずに、どうしても叶えて欲しいことを一つだけ、しかも、できるだけ具体的にお願いするといいのだそうです。 

 ちょっと興味を持った私は、その寺に行ってみたくなったのですが、ここで困ったことが…。 

 「お願いごとは一つ」と言われると、どれにしようか悩みに悩んでしまい、なかなか一つに決める事が出来ないのです。そして気がつくと自分自身の願いごとばかりになってしまい、「なんて厚かましいのだろう!」と思ってしまいました。 

 ふと、普段の私の生活を振り返ってみると家族や仕事場、そして、多くの友人に支えられているはずなのに、願い事は自分の事ばかり。 

 欲張らずに今どうしても叶えて欲しいお願い事を一つ。考えれば考えるほど悩んでしまいます。やっぱりたった一つの願い事は未だに決まらないままです。 

 でも、決まらないと言うことは、私自身の今が幸せなんでしょうね。(エバ)

第600号 負担先行の社会保障改革