第530号 領海警備の強化へ
去る2月28日、「海上保安庁法の改正法案」および関連法案が閣議決定されました。これが国会で審議され、可決されれば、領海を守る海上保安官の活動がずいぶんとしやすくなります。私が大臣時代に指示を出した案件が2年越しでようやく結実し、国会審議に付されることを、感慨を持って受け止めています。
◆尖閣諸島沖事件の本質
2010年9月、尖閣諸島沖で中国漁船が海上保安庁(海保)巡視船に衝突し、公務執行妨害容疑で中国人船長が逮捕されました。その後、船長の送検、拘留がなされましたが、中国当局は現地の日本人の拘束を行うなどしたため、極めて緊張した外交問題へと発展しました。そんな中、私が国土交通大臣に就任したのですが、この問題は当然大きな争点として取り上げられることとなりました。
そして11月4日未明、容疑の証拠となる海保の記録映像がネット上に流出しました。その情報漏えいに対する責任を問われ、27日には参議院で問責決議が可決し、翌年の内閣改造により大臣を辞任いたしました。
当時国会では大臣の責任ばかりが問われていましたが、退任を覚悟していた私はこの状況を冷静に見ていました。情報漏えいなどは問題の本質ではなく、そもそもは海上警察権が陸上警察権と比較して、極めて脆弱な状況に陥ってしまっている現実を変えなければ同様の出来事が繰り返され、領海警備の強化はおろか、保安官も常に危険にさらされるだろう、そのように感じた私は、海上警察権の強化を命じました。
◆司法警察権と行政警察権
警察権限には、犯罪の取締りである司法警察権(捜査・押収・逮捕など)と、犯罪予防(警ら・検問など)である行政警察権があります。戦前、特高警察が行政警察権を乱用したことから、戦後警察組織が一般の行政規制を行うことが封印され、タブーを乗り越えることが出来ないまま現在に至るのですが、陸上警察では個別の法律で多くの行政警察権限を保有する取り組みをしてきており、暴力団対策法やストーカー規正法はその代表的なものとして大きな意義を有しています。
しかし、海上警察権ではこうした取り組みは一切なされてきませんでした。さらに、一般の刑事事案とは異なり、海保は国境警備なので、その処理に政治的な判断を要するため、本来であれば一般的な刑事訴訟法ではない特別の処理法を定めておくのが合理的であるはずです。こうした議論を大臣時代に徹底的に進め、ようやく日の目を見たのが、今回の領海警備強化の法案です。
今回の海上保安庁法の改正により、海保の行政警察権がより強化されることになりました。国会では、海保のみならず海上自衛隊も含む国家としての「領海警備」を全般に規定する法律の制定も叫ばれておりますが、数々の外交問題を抱えながら簡単に法制化が進まないのが現状です。その意味で、現実的な、行政組織の規定の見直しというアプローチを選んだことは極めて意義があると思っています。
ようやく尖閣問題の課題の解決に一歩踏み出せることになったことをうれしく思います。引き続き、領海問題には深く関わって行きたいと思っています。(了)
スタッフ日記「初心に戻って」
私は2月から国会の事務所でインターンをさせて頂いている大学生です。「国会ってどんなふうに運営されているのだろう。」「国家の中心で働くってどんな気分なのだろう。」そんな憧れと好奇心の入り混じったような気持ちを抱いて今回のインターンを希望しました。
国会の事務所に通い始めてとても印象的だったのは、「まぶち会」を始めとする数多くの支援者の方々、その他関係者の方々に一人一人頭を下げながら活動している代議士やスタッフの姿です。
このような姿を見て、私は自分の祖母のことを思い出しました。私の祖母は地元で民生委員をしており、よりよい地域づくりを目指して日々尽力しています。障がいを持っている方の代わりに役所に申請を出しに行ったり、高齢者の方に介護保険制度の説明をして利用を勧めたり、時には育児に悩むお母さんたちの相談にのることまであるそうです。祖母自身も今年で後期高齢期を迎えるような年齢なので体力的にも大変だろうなと思う一方で、これが本当の意味での政治なのではないかと思うようになりました。これを契機に私は「生活者の視点」を念頭に置きながら政策や法制度について学ぶ現在の学部に入学を決意したのです。
机上の空論を唱えるような政治は本物の政治じゃない、どんな小さな声でも一つ一つ聞き入れ、人との繋がりを大事にすることこそ真の政治ではないかというあの頃抱いた気持ちを再び思い出させてくれたこの事務所で、今年の春はたくさんのことを吸収したいと思っています。(サリー)