第519号 「フクシマ法」検討へ

2011年12月17日 (土) ─

 原子力災害をこうむった者として、チェルノブイリ被災地に学ぶことは多くあり、原発事故収束担当の総理補佐官時代も、チェルノブイリ関連の情報のアクセスは頻繁に、密に行っていました。

 そしていま、党内の原発事故収束PT(プロジェクト・チーム)でもチェルノブイリ法を学びながら検討を開始しています。

 1990年4月25日のソビエト連邦最高会議決議N1452-1には、チェルノブイリ法採択前の状況が真摯に、かつ厳しく次のように記されています。

「放射能汚染の被害を受けた地域の社会的政治的状況は、極めて緊迫したものとなっている。原因は学者や専門家たちによる放射線防護に関する提案が互いに矛盾していること、不可欠な対策の実施が遅れていること、そしてその結果として住民の一部が地方や中央の政治に対する信頼を失ったことである。事故被害の状況の本格的な調査や、根拠ある対策プログラムの策定は遅れている。このことは放射能被害を受けた地域住民に法的根拠ある憤慨を引き起こしている。」

 これを読むにつけ、まるで今の我が国の状況を表しているかのようで、驚嘆に値します。そして、このことは自らも当事者の1人として重く受け止めなければならないとの思いを強くします。

◆チェルノブイリ法に見る「移住権」
 さて、チェルノブイリ法は事故の被災地を「義務的移住」(強制移住地域)、「移住権付与」(住民が望むのであれば移住でき、政府のサポートが受けられる)、「移住権なし」(移住の必要なしと政府が判断した地域)の3段階に区分して、「移住権」というものを規定しています。

 この移住権はチェルノブイリ法17条で強制移住対象地域外で、放射線量・土壌汚染度が一定レベルを超える地域で他地域への移住を希望する住民に移住費用、喪失資産補償、移住先での住宅・雇用支援を受ける権利として規定しています。また、該当する地域では、継続して居住することも認められており、継続居住者に対しても一定の支援がなされるようになっています。その付与の基準は放射線量が年間1ミリシーベルト以上、また、土壌汚染度は1平方キロメートルあたりの土壌セシウム137濃度が15キュリーという数値でした。

◆「帰還権」の必要性
 ご存知の通り、チェルノブイリの原発事故が起きた当時のウクライナは共産主義国であるソ連の一部であったため、土地に関して「私有」という考えはなく、先述の喪失資産の補償には土地は含まれてはいませんが、「住まう権利」と「移る権利」を規定することにより、極端な人口の流出を防ぐという点においては効果的でした。さらに、チェルノブイリ法には規定されていませんが、帰還権もセットで考えるべきであるという論点を改めて打ち出してゆきます。

 「帰還権」とは、国の避難指示で移住を余儀なくされた住民と、移住権を行使して他地域に移住した住民が、一定の期間を経て元の地域(居住禁止地区を除く)への帰還を希望した場合に、不動産など移送できない資産の補償、帰還の費用、帰還先での住宅確保や就業に関わる支援を受ける権利のことです。

 これこそが一方通行の人口減少を防ぐ手立てになるのではないかと考えます。原発事故収束PTでもチェルノブイリ法に代わる「フクシマ法」を検討すべく順次議論を行ってまいります。(了) 

 

スタッフ日記「深夜のメール」
 先日哀しい報せが届きました。

 OL時代の先輩だった彼女とは、十数年前に出会いました。おしゃれで、何事にもポジティブな女性でした。ご主人とも仲がよく、二人の娘さんの母でもある彼女は、私の憧れでした。年齢は私よりもひとまわりと少し上でしたが、不思議と私達は気があい、私が結婚してからも、年に数回は大阪にショッピングや、食事に行ったり。時間を忘れて、何時間も語り合うこともありました。悩みや、相談のメールが届くこともありました。彼女からのメールはいつも深夜に届きました、しかし数年前から、二人の予定があわず、会う機会は少なくなりました。年賀状や、お互いの誕生日にプレゼントを贈りあうくらいになっていました。

 昨年の12月、1通のメールが届きました。「入院しました」という彼女からのものでした。私は慌ててお見舞いに行きました。その時の彼女は少し痩せてはいましたが、変わらず前向きで、私がお見舞いに来たことを喜んでくれました。

 今は携帯電話やパソコンなどが普及して、いつでもどこからでも手軽に電話をかけたりメールを送ることができます。私は彼女のことが気になりつつも、便利さに甘え、いつでも連絡できるという思いで、何かあれば連絡をくれるだろうと考えていました。

 そして、先日届いた喪中のはがきで、彼女が旅立ったことを知りました。2か月前だったそうです。なぜ連絡をしなかったのか悔やまれてなりません。彼女のご冥福を祈りつつ、深夜にメールが届くたびに、「もしや彼女からでは…」と届くはずのないメールを待っている自分がいます。(まーちゃん)     

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