がん免疫細胞療法の可能性
党人事が終了し、選挙対策委員長再任となった。
再び、選挙三昧の生活となってしまうが政策テーマとして引き続き興味ある分野についてはフォローしていきたいと思う。
その一つでもある、がん対策については前回も記した。がん対策の中でも免疫療法、とりわけ注目を集める「免疫細胞療法」の可能性について取り組みたいと思っている。
◆免疫療法と免疫細胞療法
免疫細胞療法は、がん患者の体内にある免疫細胞を一度体外に取り出し、強い刺激を加えながら培養して免疫細胞の活性を高め、がんを攻撃する戦力を整えて、患者本人の体内に戻すというがん治療法だ。
免疫細胞を体外で培養する「免疫細胞療法」は、その他の「免疫療法」とは大きく異なる。従来の免疫療法は、病原体やサイトカイン類など免疫刺激物質を体に投与するもので、手軽で費用も安い療法。
しかし、強力な免疫刺激物質を投与すると、がんを攻撃する免疫力は高まるが、強い免疫刺激は患者にとっては危険である。一方、弱い免疫刺激は安全だが、十分な効果は期待できない。このジレンマを克服するのが、免疫細胞療法だと言われている。
◆免疫細胞療法の仕組み
がん細胞そのものは全ての人の体内に日常的に存在する。しかし、全ての人ががんになるわけではない。それは、体内の免疫細胞が全身をパトロールして、がん細胞を見つけて排除しているためと考えられている。
この仕組みを「免疫監視機構」と唱えたのがオーストラリアのノーベル賞学者のバーネット博士で、1970年のこと。以降、現在も広く支持されている。免疫細胞療法は、この免疫細胞を体外に取り出して強い刺激を与え、がんと闘う力を目覚めさせて体内に戻しがん細胞を倒していくという療法だ。
バーネット博士の免疫監視機構説にによって免疫細胞の研究が1970年頃より始まり、細胞傷害性T細胞や樹状細胞によってがんを攻撃するメカニズムを明らかにし治療としての実用化する取り組みが行われてきたが、決定的な成果を上げるには至らなかった。
その後、もっと強力な、がん退治が可能な免疫細胞を探す研究が進み、1975年、がん細胞を倒すNK(ナチュラルキラー)細胞が発見された。
さらに研究が進み、NK細胞が強力にがんを攻撃することが明らかになる中で、1984年、米国国立衛生研究所(NIH)による「リンフォカイン活性化キラー細胞療法(LAK療法)」が大規模臨床試験として実施され、免疫細胞療法の基本原則が確立された。
現在では、患者からNK細胞を含むリンパ球を取り出し、活性化を高めて体内に戻すという「活性化自己リンパ球移入法」が、免疫細胞療法として行われている。
◆標準治療との組み合わせ
免疫細胞療法は、手術、化学療法、放射線療法といった標準治療を否定するものではない。免疫細胞療法だけですべてのがんを治療するということではなく、標準治療と併せて、標準治療でがん細胞を一気に減らし、免疫細胞療法で残りのがんを叩くといった新たな選択肢を患者に提供することが重要と考える。
現行の標準治療では、遠隔転移群の5年生存率は平均で12.5%、胃がん肺がんでは5%台、肝がんでは1%台とされ、事実上、標準治療では対応できない症例があることは明らかだ。
公的保険でカバーできる治療法が期待できないケースでは、先端医療(自由診療)に患者は期待をせざるを得ない実態がある。このような状況の中で、免疫細胞療法のような新たな治療法が「第4の標準治療」を目指している過渡期には、自由診療をサポートする制度も含めて検討が必要と考える。
ただし、標準治療をがん治療のスタンダード(だから標準なんだが)としてきた医学界や製薬業界が、このような療法を「第四の標準治療」と認めるには相当の壁があるのも事実だ。
既得権益と一言で済ませる気はないが、既存の療法とも併せたあらゆる方法を考えて取り組みを進めていきたいと考えている。