「濃い時間」から「淡い想い出」へ
2005年12月31日 (土) ─
郵政解散から耐震偽装追及と本当に、濃〜い時間を過ごしてきたこの何ヶ月か。
やっと、ホッとして本屋に飛び込んで手にした一冊は島本理生の「ナラタージュ」。
ナラタージュ・・・映画などで、主人公が回想の形で、過去の出来事を物語ること。
主人公は二十歳の女子大生。
その女子大生の心の中に残る淡い想い出(であるはず)の恋が、それこそ人生を賭けるほどの迸りとなって噴き出し、そしてやがてまた、決して忘れ去ることはできないが、過去だと意識することで現実から切り離されていく。しかし、当時の壊れるまでに張りつめた気持ちは、ごまかすことも、そらすこともできない。
「子どもだったから、愛してるってことに気づかなかったんだよ。」
そ、人は皆気づかずに人を傷つけながら生きている。
ここんとこ、濃い話ばかりだっただけに、いつしか小説の中に引き込まれ、心が洗われる。わずかな、安逸が訪れる瞬間。
「人の気持ちは、淡い色の塗り重ねなんだね。」と思わず語る言葉に、「エッ、何?。」と振り向くヒロコ。
「ううん。」と、あっという間に読み終えた本を閉じ、「読んでごらん。」と渡す。
こうして、手渡せる人が傍らにいてくれることに、感謝する...。
「濃い時間」から「淡い想い出」へ