第710号 消費増税を凍結せよ

2015年10月24日 (土) ─

 再来年4月に予定される消費税10%への引き上げについて、12日、麻生財務大臣が記者会見で、「上げられないということは想定していない」と発言し、16日には自民党税制調査会が増税と同時に軽減税率を導入する方針を確認するなど、具体的な動きが始まっています。

◆悪化する実態経済
 政府与党は、再来年4月に引き上げを行う準備に入っていますが、昨年の4月に消費税が8%になって以降、経済情勢は確実に悪化しています。

 例えば、2014年度の実質GDPはマイナス0.9%と、リーマンショック発生時以来5年ぶりのマイナス成長でした。その傾向は今年度に入ってからも続き、2015年4-6月期の実質GDPは前期比マイナス0.3%であり、また、11月に発表予定の7-9月のGDP速報値も、マイナス成長の可能性を指摘されています。

 特に落ち込みが深刻な個人消費に消費増税が影響していることは明らかです。厚労省の国民生活基礎調査では、消費増税後の2014年7月時点で、62.4%の世帯が「生活が苦しい」と回答しており、これは1986年に調査を開始して以来、最悪の数字です。消費者は、増税後の生活苦とさらなる引き上げへの不安から、ますます消費を控えるようになってきていると思われます。

 このままの状態で再来年4月に消費税を10%に上げれば、更なる個人消費の落ち込みと経済情勢の悪化は確実です。

◆消費増税は凍結すべき
 こうした経済情勢で民主党として主張すべきなのは、消費増税の凍結です。

 確かに、10%への引き上げを決定したのは民主党政権ではないか、という批判もあります。しかし、民主党政権では、いわゆる「消費増税法」の附則18条3項に、引き上げに関し「経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる」との規定、いわゆる「景気条項」を盛り込んでいました。

 つまり、政府が経済情勢を見極めてその時点での増税が不適切と判断すれば、引き上げを凍結するしくみにしていたのです。いわばこの「景気条項」は国民生活を守る最後の砦ともいえるものです。現在のような厳しい経済情勢は、まさしくこの適用が検討されるべき状況です。

 昨年末、安倍総理はこの「景気条項」に基づき、消費税の10%への引き上げ延期を争点に衆院を解散しました。ところが、選挙に勝利すると、今年3月には法改正によってこの「景気条項」を削除してしまいました。

 この不可解な動きは、何としてでも10%への引き上げを断行したい財務省に増税の延期を了承させるために、「景気条項」を削除するという交換条件を出した、と見るのが妥当です。

 したがって、民主党が安倍政権の「景気条項」削除を批判し、堂々と消費増税の凍結を主張することは、これまでの主張となんら矛盾しません。むしろ、増税凍結は政府の経済政策への対案としてしっかりと打ち出すべきものです。

 現在、民主党内で必ずしも主流であるとは言えない増税凍結論ですが、政府与党への対立軸として、今後必要性を国民の皆様に発信し、志を同じくする議員と連携しながら党内にも説いていく所存です。  (了)

スタッフ日記「実りの秋に出会った逸品」
 先日、奈良漬のお店へ伺う機会がありました。奈良県が誇る土産物として全国的にも有名な奈良漬ですが、高価なうえにクセのある独特の味があり、なかなか手が出しにくい、というのが私のイメージでした。

 奈良漬の歴史は古く、1300年前からで、奈良県内には江戸時代からその伝統ある味を守り続けているという老舗もあるようです。普通の漬物との違いは、製造過程の中で、まず塩漬けしたものを酒粕に漬け込み、そのあとにまた新しい酒粕に漬け込む、という工程を何度か繰り返すことです。こうしてじっくりと塩分を抜くことで、酒粕のうま味が野菜全体を包み込み、かつ、野菜が本来持つシャキシャキとした食感が残るのだそうです。

 また、酒粕だけで丹念に漬け込む老舗では、熟成期間が最低でも4年、長いものでは13年に及ぶものもあると聞き、その長さに驚きましたが、そうした逸品は甘味料や保存料、着色料を一切使っていないにもかかわらず、40℃以下の場所であれば開封したあとでも2年以上はもつとのことで、さらにびっくりしました。

 そんな話を聞いた後で一切れ口にすると、無駄なクセが一切なく、口あたりもサッパリしておいしく頂けました。

 伝統だけではなく、たゆまぬ努力をも引き継ぎ、何層にも味を重ねてできた奈良漬に出会って感動し、お店の方に「北海道の方にも人気ですよ」と声をかけられ、実家にでも送ろうかと考えている秋です。 (特命係長)

第710号 消費増税を凍結せよ