第706号 通常国会閉会を受けて
今年1月に始まった通常国会は、245日間の会期を経て、今月27日に会期末を迎えます。通常国会での95日間の会期延長は戦後最長でした。
◆議論を避ける政府
今国会では、国の行く末を考える上で、とりわけ重要な法案の成立が目立ちました。
その筆頭は、もちろん我が国の集団的自衛権の行使を一部可能にする安保法案です。憲法との整合性や、具体的な法の運用の仕組み、法が適用される具体例等について、いずれも十分な説明を欠いたまま、強行採決で法案が成立してしまったことには憤りを感じます。
さらに、改正派遣労働者法も成立しました。これにより、最長3年ごとに人を入れ替えれば、同じ職場で何年でも派遣労働者を受け入れられるようになりますが、派遣労働者の低待遇や、その改善策としての同一価値労働同一賃金制度の導入など、本質的な問題の議論は十分ではありませんでした。結果、単に派遣労働者の使い勝手をよくするための改正に過ぎないとの批判が出ています。
また、モノやサービスの貿易自由化を推し進める、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)政策は現在交渉中ですが、政府は、難航していると伝えられる知的財産や乳製品について、なんとしてでも近いうちに協定を締結したいとしています。しかし、実はその交渉過程の情報が国会議員にさえ一切提供されておらず、協定の是非をめぐる審議は実質ゼロです。
これらに共通するのは、政府が国会での十分な議論を避け、時期を区切って拙速な政策の実現を図ろうとしているという点です。米国や経済界が要望する締め切りに従い、国会での審議を軽視したまま政策の実現を図る政府の姿勢は、まさに民意無視・国会軽視の「暴走」と言えるものです。
◆参院選に向けて
こうした強引な政権運営を受けて、安倍内閣の支持率はここ半年で急落しています。
しかし、与党の支持率には大きな変化が無く、野党が政府への不満や不安の受け皿となり得ているとは言えない状況です。
その大きな要因としては、分裂騒動や、連携の乱れなど、与党と対峙できる野党勢力の結集が必ずしも上手くいっていないことがあげられます。そのことを認識し、まずはもう一度政権を担いうる野党勢力の結集を目指します。
政策面では、与党との対立軸を明確にする政策を練り上げていきます。
安倍政権は、国政選挙の合間を縫って安保法制の整備を進めてきましたが、本来、将来にわたり国の方向性を左右し、国論を二分する安保政策は、国政選挙の争点として国民の判断を仰ぐべきものです。来年の参院選では、今国会で成立した安保法の抜本的見直しを訴えていかなければなりません。
また、経済政策では、成長を目指すことは当然の前提ですが、その結果得られる果実の再分配の充実について、与党との違いを明確にし、年金や子育て支援などの社会保障政策についても、現状不足している点の改善を掲げていきます。
今後も政権の「受け皿」としての野党の構築に全力で取り組んで参ります。(了)
スタッフ日記「大人の定義とは」
最近、体重の増加がいちじるしく、身体大きくなったねぇ、と言われることが多くなりました。ワールドカップで南アフリカに勝利し、目にすることが増えたからか、ラグビー選手みたい、と仰る方もいらっしゃいます。加えて、北国育ちなので、大抵の方が、お酒が強そうだなと言って下さるのですが、実は私、お酒が飲めません。いわゆる下戸なのです。
まだNHKドラマで人気を博す前、ニッカウヰスキー余市工場へ行く機会がありました。原酒と呼ばれるウヰスキーが樽の中で何年も熟成されて放つ、ほのかな香りが漂う煉瓦造りの建物を見学し、子供ながらに憧れをもったのを覚えています。
それから15年が経ちましたが、味わいのある、深みがわかる大人への道のりはまだ先のようです。
ここのところ飲酒や喫煙が可能な「成人」の年齢を引き下げる議論がなされています。また、その前に選挙権の年齢が18歳以上に引き下げられ、来年の参院選から適用されることになったのも記憶に新しいかと思います。
今回の安保法案も、若い世代、とりわけ高校生や学生の政治への参加が世間に大きな関心をもたらしたのも事実です。
大人の定義が変わりつつある中で、より若い世代の若者が社会的責任をもって行動することを求められる、そのように解釈すると、私自身ももう一度自らの襟を正し、自らを見つめ直す機会となりました。
熟成を重ねると共に個性的な香りと味わい、そして円熟味や穏やかさ、濃密さが加わり、気品を感じる余韻を醸し出す、そんな年代物のウヰスキーのような大人になれるよう努力したいです。(特命係長)