第704号 無投票とポスト安倍
8日、自民党総裁選に意欲を見せていた野田聖子氏が出馬断念を表明し、安倍総裁の無投票再選が確定しました。
◆官邸の危機感
総裁選について、当初、官邸側は①リベラル色の濃い候補者を擁立させ、②全国を総裁選報道でメディアジャックし、③自民一色の政治状況を国民の前に示して、最終的には安倍総裁が勝利するというシナリオを描き、野田氏を候補者として想定していたと思われます。戦略としては、リベラル系の候補者が健闘むなしく敗北するものの、自民党の幅広さと懐深さを演出し、国民世論を引きつけ、政権支持率の回復と安保法案の成立を目指すというものだったはずです。
しかし、9月に入り安保法制審議が滞り出すと、官邸は、対立候補の登場は法案審議の障害となり、ひいては「倒閣」にも繋がりかねないことを意識しはじめました。
参院での審議は、閣僚答弁が二転三転する上、「国会軽視」とも取れる防衛省内部資料等が次々と明らかになり、たびたび中断に追い込まれています。
このタイミングでの総裁選実施は、野党にとっては安保法制審議をストップさせる絶好の口実となります。つまり、総裁選が倒閣運動そのものになり得るということです。したがって、無投票再選という結果は、官邸が、当初ベストだと考えていた総裁選のシナリオを変えざるを得ない程の強い危機感を抱いていることを示しています。
◆今後の安倍総理の動きは?
会期末を27日に控える中、与党は15日に参院の特別委員会で中央公聴会を開き、16日にも安保法制の委員会採決を目指す構えです。しかし、地方公聴会も開かないままの採決は野党の反発も大きく、また、内閣不信任案提出の動きもあることから、安倍総理は極めて厳しい国会運営を迫られます。
こうした中で、総理は、まずは強行すると見られる安保法制の採決、そして閉会後の大幅な内閣改造による支持率復調を当面の目標とすると思われます。さらに、来年の参院選では憲法改正を掲げ、その後、消費税の17年4月の2%の再引き上げについて「凍結」を発表して衆議院を解散する可能性も十分にあります。
◆ニューリーダーの必要性
政権側というのは常に権力の保持、維持に執着する立場にあります。したがって、安易な退陣論は、政局を見誤る恐れがあることを野党としては肝に銘じる必要があります。今回の擁立失敗劇から分かる通り、派閥間で疑似政権交代を繰り返し、国民の支持を繋ぎとめてきた、かつての自民党のエネルギーはもはやありません。
むしろ、ポスト安倍をめぐる争いは今後、派閥間の思想対立よりも、安倍総裁の一強支配に不満を募らせる、当選回数の浅い若手を中心とした、世代間対立の色彩がより濃く表れることになると思われます。結集が滞っている野党にとっては、将来的にこの新世代に政権が移る自民党の方が、より脅威となると考えるべきです。
こうしたポスト安倍に対抗するためにも、我々も世代間対立を乗り越え、かつ野党の結集を念頭に、現実的な再編と自らのことも含めてニューリーダーの創造に全力を尽くします。(了)
スタッフ日記「自分を見つめなおす」
先日、伯母の法要の為、福岡に行ってきました。
親族の多くは福岡を離れてしまっているため、なかなか集まりません。しかし旧家のため親戚が集まると数は多く、毎度のことながら、法要というのを忘れてしまうほどの賑やかさになります。
今回は四十九日の法要だった為、お寺でお坊さんに読経をしていただいたのち、お墓に納骨をしました。
父から、今回は私が代表してお墓の中に入り、納骨の最終確認をするように、との指令が下され、多くの親戚に見守られながら、初めてお墓の中に入ることとなりました。
墓石をずらしてもらい、中に入ってみると、そこには先祖代々の骨壺が20ほどあり驚きました。墓誌(死者の事績などを、墓石に書き記したもの)には、90入っている先祖の名前が数多く記してあったため、骨壺が沢山あることは知っていましたが、改めて自らの目で見ると、私が今ここに存在しているのは、この人たちが繋いできてくれたおかげなのだな…、と実感するところであります。
翌日、遺品整理を兼ね、家などの大掃除をしていると、江戸時代から続く家系図が家の中から見つかり、ここでも繋がりというものを感じました。
私はこの法要の数日の間で、自分の存在は数々の祖先はもちろん、それこそ家系図から分かった江戸時代、そしてそれ以前の記録に残ってはいないけれども祖先と関わってきた、繋がってきた人たちのお蔭で、今ここにいるのだなと実感するとともに、存命している両親や祖父母への敬いと感謝の心を今一度確認できた良い機会だったのかなと思いました。(大当たり)