第691号 「違憲」の安保法案
4日、衆議院憲法審査会で、憲法学の第一人者である自民党推薦の長谷部恭男・早稲田大教授を含む3人の参考人(いずれも憲法学者)全員が、現在審議中の安保法案について「違憲」との見解を示しました。
◆根拠なき政府側主張
政府は、憲法学者3名の「違憲」指摘に対し、反論を公表しましたが、その主張は従来の政府の説明の焼き直しに過ぎず、納得力のある新しい理由は示されないままです。
政府は、法案が合憲であるという根拠として砂川事件最高裁判決を繰り返し挙げています。しかし、砂川事件判決は、我が国自身に自らを守る個別的な自衛権はあるものの、他国が攻撃を受けた場合に共同して防衛する集団的自衛権については判断していないと理解するのが文言上自然で、そうした解釈が学説でも一般的です。
また、政府はこれまでの政府見解で示されてきた、①憲法は自国の平和維持のために必要な自衛の措置をとることを禁じていない、②自衛のための措置は必要最小限度の範囲にとどまるべきものである、という基本的論理は変えていないと主張しています。
しかし、最も重要な、従来の政府見解の結論部分である、③わが憲法の下で武力行使を行うことが許されるのは、わが国に対する急迫、不正の侵害に対処する場合に限られ、集団的自衛権の行使は、憲法上許されないといわざるを得ない、という部分を180度転換し、集団的自衛権も認められるとしています。
同じ理屈を用いながら、従来と真逆の結論を導く方法は、恣意的な解釈変更であり、これまでの政府の憲法解釈との整合性を欠いています。
◆危うい前のめりの議論
衆議院憲法審査会における3人の憲法学者の「違憲」指摘について、これを単なる参考人の人選ミス、自民党によるオウンゴールとみる向きもありますが、決してそうではありません。
今回の安保法案の背景には、昨年7月の集団的自衛権行使容認の閣議決定がありますが、その閣議決定を後押しした政府の有識者会議「安保法制懇」のメンバーを見ると今回の騒動の本質が分ります。
安保法制懇のメンバーは、改憲派の1名の憲法学者を除けば、そのほとんどが外交・安保の専門家、すなわち行使容認を「必要」と考える人達で構成されていました。法制度を検討する際には、通常、「必要性」と「許容性」の議論が必要ですが、ここでは前のめりの「必要性」の議論が先行し、憲法上許されるのかという「許容性」の議論はなおざりにされていたのです。
それが問題として吹き出したのが先日の憲法学者達による「違憲」発言です。丁寧な「検証」を欠くことに起因する脆弱さ・危うさは、安倍政権の多くの政策に通じる問題です。
法案、特に国の安全保障に関わる法案を国会に提出する際には、法案の内容が憲法に適合するかどうかをあらかじめ慎重に検証することが、立憲主義の基本です。それを欠いた今回の安保法案はとうてい国会での議論に耐え得るものではありません。「違憲」との有力な疑義が指摘された以上、政府はこの法案を速やかに撤回すべきと考えます。(了)
スタッフ日記「ドキドキの結果待ち」
議員会館では5月に秘書の健康診断があります。
大病の経験はないものの、絶好調!という体調の日も少なく、万年緩やかな低空飛行状態の私は毎回「何か見つかるのでは?」とひやひやしながら受診しています。
いつも指摘されるのは血圧の低さと血の薄さですが、今回、血圧が初めて100を超えました。その快挙を喜んだのもつかの間、それを打ち消す脅威がありました。
当日、私は風邪でひどく咳が出ていました。そうなると問題は心電図です。咳き込んで波長が乱れ、あらぬ疑いをかけられて、大病院での再検査を命じられる…たまったものではありません。
「リラックスしてくださいね」そんな言葉とともに、身体にたくさんの電極をつけられて横になりましたが、喉元にせりあがってくる咳の衝動を抑えるため口を真一文字に引き結び、小さく震えている様は、ショッカーに改造される仮面ライダーを思わせました。そして案の定、大いに咳き込んだのでした。
また、問診にも爆弾が潜んでいました。聴診器を当てたあと、お医者さんは私の耳の下に手を当て「甲状腺を疑われたことはないですか?」と聞きました。思いもよらぬパーツへの嫌疑に動揺しながら否定すると、お医者さんはさらりと言いました。「じゃ、甲状腺が緩やかに震えているんですが、様子を見ましょう」。
それだけです。甲状腺が震えていると何が悪いのかは言ってくれません。心配になり「何か悪いんですか?」と聞きましたが、またさらりと「大丈夫ですよー、ハイ、次の方!」と交わされてしまいました。
さて、そろそろ結果が送られてくる頃です。ドキドキが止まりません。(シズ)