第618号 「秘密保護法国会」閉会
6日、与党による強行採決の末、特定秘密保護法案が成立し、臨時国会が閉会しました。
◆安倍政権の狙いは何か
安倍首相は、9日に記者会見を行い、「私自身がもっと丁寧に時間をとって説明すべきだったと反省している」と述べましたが、法案を強行採決したのはこの3日前のことです。だったら、始めから慎重審議すればよかったではないか、というのが率直な感想です。
これまでお伝えしてきた通り、私はこの法案のスタート地点に関わっています。3年前、当時国交大臣だった私は、尖閣ビデオ流出事件を理由に、参院で問責決議を受けました。私が感じたのは、「国家機密」の定義も曖昧な中、一つ一つの情報漏えいを理由に、毎回、閣僚が辞任に追い込まれれば、官僚が恣意的に情報を漏洩し、次々と閣僚をクビにできてしまうという問題意識でした。私は所管大臣として政治的責任を負う覚悟はできていましたが、当時の仙谷官房長官に「情報保全に関しては、国家機密の定義も含め、制度を整えるべきだ」と提案しました。
これがきっかけとなり、政府に検討会議が設置され、2011年8月には報告書が出されました。そこでは、「運用を誤れば、国民の重要な権利利益を侵害するおそれ」が指摘され、「知る権利」などの国民の利益保護と情報保全を、どのようにバランスを取っていくかが真剣に議論されていました。
今回の法案もこの報告書を元につくられましたが、情報公開や第三者機関のチェックなどの肝心な部分が全く抜け落ち、私たちが意図していたものとは似て非なるものになってしまいました。要は、「国防軍」などを主張する安倍政権が、当時の議論を自らに都合のいい形で流用しただけということです。こんなデタラメな法案では国会審議が紛糾するのは当然の結果だったと言えます。今回の件や、現在報じられている「共謀罪」創設の政府内での検討を踏まえると、安倍政権が「国民への監視」を強める方向性を目指していることは明らかです。
◆来年の通常国会に向けて
臨時国会前、野党は福島第一原発の汚染水問題や、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)問題で政府を追及する構えでしたが、国会終盤はまさに「秘密保護法国会」でした。汚染水問題は、政権を担っていた民主党にも責任があり、TPPは交渉中の事案です。いずれも本来は争点にはなりにくいものです。であるならば、国会冒頭から特定秘密保護法案に照準を絞り、早い段階で民主党の対案を提示し、野党共闘などを模索する選択肢もあったはずです。先を見越した戦略的思考が足りなかった側面は否めません。
その意味で、これから大事になるのは来年1月の通常国会に向けた戦略づくりです。
来年4月には消費税率が引き上げられますが、政府が先日発表した景気対策はハコモノやバラマキばかりで、全く不十分なものです。社会保障改革も置き去りです。圧倒的多数を持つ与党にどう対峙するか、少数野党として極めて難しい課題ですが、民主党は主張すべき政策を整理し、争点設定を含めた戦略を練り上げ、安倍政権の問題点を明らかにしていきます。年明けの通常国会は正念場です。(了)
スタッフ日記「1人で飲むビール」
休日はほとんど家から出ることがないので、私が人と接触するのは、平日の職場への行き帰り(買い物も仕事の帰りにだいたい済ませてしまう)と仕事中くらいのものです。
中でも通勤に使う電車の中は色々な人がいて楽しいものです。年齢も性別も職業も、抱えている事情も全く違う人たちが「ただ移動する」、その1点においてのみ集まって四角い車内に押し込められているのですから、当然といえば当然ですが、1時間以上も乗っているとやはり自然と耳に入ってくる会話なども出てきます。
もう半年ほど前のことになりますが、帰りの電車で私の近くに、とても仲のよさそうなサラリーマンの5人組が乗っていました。飲み会の帰りらしく、「シャン」とは立っていないものの、それでも周囲に迷惑をかけるようなことはなく、なかなか楽しそうに話していました。
しかしながらその中身はというと「店に1人で行ってビール飲むのと、冷蔵庫開けてビールを出してキッチンで1人で飲むのと、どっちが寂しいか?」というなかなかに深いテーマなのでありました。
そのお題を投げたオジサンに何があったのかは知る由もありませんし、酔っ払っているせいで議論がグダグダになって結論はわからずじまいなのですが、テーマからそこはかとなく漂ってくる哀感と、一人ぼっちを怖がるオジサンたちの「かわいらしさ」が大変に印象深い出来事でした。
年末年始を迎え、これからお酒を飲む機会も増えますが、1人で飲むビール、ではなく、皆様がたくさんの人たちと楽しい時間を過ごされますよう心からお祈りしております!
ちなみに私ですが、もう随分前に「寂しい」なんて言葉は忘れてしまいました…。(シズ)