第617号 朝から「生」田原!
特定秘密保護法案の参院採決をめぐり国会情勢が緊迫する中、「文藝春秋」の取材で、原子力問題をテーマに、早朝より「朝まで生テレビ」で有名なジャーナリストの田原総一朗氏の取材を受けました。主たる話題は、原発と東電問題でしたが、今回は、これと密接に関連する原子力協定の問題を取り上げます。
◆二本の原子力協定
原子力協定は、原子力の平和的利用を担保するために二国間で結ばれる協定で、原発輸出を行うための前提となるものです。今国会では、日本とアラブ首長国連邦(以下、「UAE」)、日本とトルコの間の2本の原子力協定が提出されています。
問題は、トルコとの原子力協定の方で、核兵器開発につながりかねない核物質の濃縮・再処理について、「両締約国政府が書面により合意する場合に限り」、「(トルコにおいて)濃縮し、又は再処理することができる」としている点です。UAEとの協定では、「濃縮され、又は再処理されない」と明確に書かれていることと比較すると、「できる」というポジティブな表現が、あたかも日本がトルコに核濃縮・再処理を認めているように読めることが問題視されています。
さらに、プルトニウム等の移転について、「移転することを可能にするような改定が行われた場合に限り」、「移転することができる」とされています。これも、UAEとの協定では、「移転されない」と明確に否定していることと比較すると、トルコとの協定により、トルコからプルトニウムを含む使用済核燃料を日本に持ちこむことになるのではないかという懸念を生じさせます。
これまでの国会審議で、政府は、それぞれ「書面合意」、「協定の改定」が条件となっており、政府としては、核濃縮・再処理やプルトニウム移転を可能とするような合意や改定をするつもりはないと答弁しています。すなわち、協定は、トルコに対して、核濃縮・再処理、プルトニウム移転を認めないのと同じとの説明です。
◆説明を避ける安倍政権
なぜこのような規定になったのか。背景には、トルコが、核の平和的利用の権利を制限することに慎重であり、条文も「○○できる」というポジティブな表現にこだわったということがあります。国際的な原発受注は、熾烈な競争となっており、ライバルの韓国や中国は、原子力協定において、相手国の核濃縮・再処理について、日本より寛容な態度をとっています。トルコへの原発輸出の合意を急いだ安倍政権が、トルコ側に譲歩した結果、このような規定ぶりになったことが容易に想像されます。
問題は、トルコ、UAEとの原子力協定を、条文を細かく見なければ分からないことをいいことに、政府があたかも2つの協定は同じものとして、与党を含む各党に説明している点です。
原子力協定は、二国間協定であり、規定ぶりや条件等は、相手国との交渉の中で決まり、複数の原子力協定の内容が異なってくることはあり得ます。しかし、その背景や意図、さらには今後の原発輸出に対する考え方や方針等、本来国会審議において政府が示すべき事項を隠そうとする姿勢は、議会制民主主義の観点から許せるものではありません。安倍政権は、自らに都合の悪い真実について逃げずに説明し、議論に堂々と応じるべきです。(了)
スタッフ日記「旬な食材」
冬もいよいよ本格化して来ました。今年もゆっくり秋を楽しむ時間がなく過ぎてしまいました。秋らしいものといえば柿を食べたくらいで、少し物足りなさを感じながら年末の準備をしていると、実家から発泡スチロールの箱が届きました。早速中をのぞくとぎっしりとししゃもが詰まっていました。
奈良ではあまり身近ではないかもしれませんが、私の地元・北海道むかわ町は飢饉を救うために神様がししゃもを遣わしたというアイヌの伝説があるところで、町をあげて「鵡川ししゃも」というブランドを売り出してゆこうと頑張っています。旬の10月になると地元では店先にも、食卓にも当たり前のようにずらりとししゃもが並び、冬の訪れを告げる風物詩となっています。
改めてししゃもについて調べてみようと町のホームページを見てみました。本当のししゃもは日本の固有種で北海道の太平洋沿岸でしか獲れない、全国で食べられているししゃもの約90%は北極海で獲れるキャペリン(別名:カラフトシシャモ)という魚で、外見や食感こそよく似ているものの、本当のししゃもとは風味が格段に違う、などちょっとした「ししゃも情報館」のような趣でたくさんのししゃもの情報が掲載されていました。
そんな地元ならではの食べ方はズバリ刺身です。とにかく鮮度が大事なので水揚げした直後でなければ食べられないのです。ただ限定されているだけあり、その味はほのかな甘みが口いっぱいに広がり、他に例えようがありません。とくにおすすめなのは握りずしです。
ここのところ産地偽装など食材への意識が問われる事件が多発していますが、安いお寿司屋さんに食べに行くよりも、本場の「こだわりの味」を大切にしていきたいと考えながら、実家からの贈り物をじっくりと味わいました。(特命係長)