第517号 都市政策を考える

2011年12月3日 (土) ─

 先の国会閉会中に、上海を訪れ、その先駆的な都市政策の取り組みについて視察をしてきました。東日本大震災、並びに福島第一原発事故をきっかけとして、日本、とりわけ東京から上海や韓国、シンガポールへ移転を考える外資系企業の動きが取りざたされていましたが、いま改めて都市の危機管理の重要性もさることながら、都市のあるべき機能とそのバックアップに意識が向けられようとしています。都市政策というと、小泉政権時代に「地方切り捨て」「東京一極集中」の象徴と言われ、大都会優遇との批判も受けましたが、ここに来て新たな局面を迎えようとしています。

◆バックアップ機能 
 政府は先に成立した第三次補正予算で、「東京圏の機能分散・バックアップに関する検討調査」に対して1400万円を計上しました。こうした案件について予算が計上されるのは初めてのことで、これはかつて法律で定められながらも形骸化してしまった「首都機能移転」の議論ではなく、震災などの危機の時に必要な首都機能のバックアップ=代替について政府が本格的に取り組む姿勢を示したものと考えられます。

 ただ、一口に「代替」といっても、行政の無駄の排除が叫ばれる中、機能を二重に持つことは簡単には許されません。東京を大震災が襲ったときに即座に震災対応が可能な行政措置を行える代替組織とは一体どの程度のものなのか、瞬時に行わなければならない立法措置を国会は定足数を減らしてでも実施できるのか、またその時に発生するトラブル対応の司法機能はどういうことが想定されるのか、など「代替すべき都市機能は何か」ということを立法・司法・行政の観点から根本的に整理し、その上で実際の有事の際に機能的な役目を果たせるような組織や業務執行の権限などを検討しなくてはなりません。国交省では有識者の検討会議を立ち上げ、年度内に議論をスタートさせますが、ようやく第一歩を踏み出した所です。

◆後れを取る日本
 一方、世界中の本社機能を集める都市機能を考えると、東京ですらその価値は低下の一途をたどっており、より高度な集積を実現するための高さ制限、用途制限等の撤廃や外国企業誘致のための施策は、諸外国に大きく後れを取っています。例えば上海などは容積率を大幅に上げて、日本の倍の高さの建造物を作ることを可能にしている上、企業誘致のための税制優遇措置も行っています。こうした後れはもはや回復の見込みが見えないほどに差がついてしまっているといっても過言ではありません。

 大阪では「都構想」を唱えた勢力のダブル選挙圧勝となりましたが、ここでも行政組織の問題だけではなく、東京に並ぶ都市機能の強化が議論の中心になっていく事が予想されます。私自身、代表選挙後に様々な知見を高めてゆきたいとして勉強会の立ち上げを考えてきましたが、こうした状況を鑑みて、「都市政策研究会」を立ち上げ、日本の成長戦略の中核をなす都市機能の強化、さらには危機管理のための都市機能代替の施策、東京、大阪あるいは名古屋などの大都市における日本の重要都市におけるメリハリの利いた都市機能負担とは何か、といったことまで含めた深掘りの議論をして参りたいと思っています。(了)

 

スタッフ日記「師走」
 今年もいよいよ12月、毎年この時期になると決まって口にする言葉があります。「1年って早いよね、もう今年もあと1ヶ月」。多少早いですが、この1年を振り返るといろんな事がありました。代議士にとっては国土交通大臣、原発担当総理補佐官、民主党代表選出馬、特筆すべきは福島原発収束に向け陸海空に放出される放射能を閉じこめるため福島第一原発入域と4号炉内への入室。そして代表選2ヶ月前から政策論争による代表選を目指し、オピニオンリーダーとして連日のメディアへの露出、怒濤の全面展開。

 政権交代から折り返し地点も過ぎました。デフレからの脱却、景気対策が重要と考え、今は増税の時期ではないと訴えてきましたが、野田総理は昨日の記者会見で消費税増税の時期や税率を明記した「大綱」を年内に取りまとめると発表されました。これについては今後、党内での攻防が本格化すると報道されています。この国の将来のあるべき姿を提示した上での徹底した議論を尽くさなければならないと思います。

 「師走」なんです。国会議員も先生もお坊さんまでもが走り出す時期なのです。

 1月下旬の通常国会開会までのひと月半、地元に帰り、走り回り有権者の皆さんと接し、国民が何を政治に求めているのか肌で感じる、そして政策として実現する。その事が政治家の最も大事な仕事だと思います。あとひと月後には地元の空気をいっぱい吸った国会議員が集い、「国民の生活が第一」の新しい流れが生まれる事を多いに期待します。今年も残り僅かとなりました。良い年をお迎えになりますようお祈り申し上げます。 (スギ)

第517号 都市政策を考える