第496号 脱・原発依存

2011年7月9日 (土) ─

 総理補佐官として統合本部(後の統合対策室)に入っている期間は、職務の性質上、なかなか東京を離れることができず、福島第一原子力発電所のサイト入域及び建屋入室が唯一の被災地入りでした。

 従って6月27日に補佐官を退任し、真っ先に被災地視察の日程を調整しました。7月1日、一番初めに向かったのは福島県です。原発収束に取り組んできた立場としては、何よりもまず被災者の方々の直接の声と、原発収束への道筋に対するご不満やご意見を伺いたい!という強い思いがありました。

 当日は県議会対応ということで佐藤雄平知事にはお会いできませんでしたが、後に電話で詳細な陳情を伺いました。また、郡山市のビックパレットに避難されている富岡町の遠藤町長や川内村副村長はじめ、地域の方々から実情と訴えをお聞きしました。「少なくとも、原発を抱える地域の自治体代表者として、今日の事故に至る危険性についてたびたび問題提起してきた」との遠藤町長の言葉は、私自身が感じていたことと重なる部分もあり、強く響きました。同じ思いを抱えた福島の方はきっと少なくはないでしょう。

◆経産省の再開要請
 6月29日、海江田経産大臣が古川康・佐賀県知事、岸本英雄・玄海町長らと会談をし、玄海原発再開を要請しました。ストレステスト問題などがあり、現在は再開容認の流れは撤回されていますが、津波対策、電源、ポンプ等の多重化など、求められてきた施策について電力事業者側の対応が安全基準を満たしたとしての再開要請でした。

 私のもとにも真摯に安全が再確認されてきたのか?今までと何も変わらないではないか?との問いかけが多方面から寄せられています。こうした中で、仮に再開がなし崩し的に起きれば、そのうちに原子力災害は福島だけのこととして矮小化され、更には忘れ去られてしまう危険性があります。全国的な再開によって、全国民が抱いた原発への不安がいつの間にか忘れ去られ、抜本的な安全の確立という本質の議論もなされないまま、やがて福島のことも一地域の被害として置き去りにされてしまうでしょう。

◆「脱・原発依存」
 私自身は原発推進派でもなければ、概念的な脱原発を掲げる非現実派でもありません。あくまでも、この事故をきっかけとして、工学的な安全に対する国際社会からの信任を得られるような技術・基準の確立をし、やみくもに原発に頼ることのない「脱・原発依存」を図るべき、というのが私の考えです。

 日本は資源が少ないので、自らエネルギー源を縛ってしまうのは得策ではありません。再生可能エネルギーの割合を20%に上げるのは相当の努力が必要となるため、早急な「脱・原発」ではなく、石油や石炭などの化石燃料の燃焼効率を高めながら、これらと再生可能なエネルギー原発、といった複数のエネルギー源の組み合わせを今回の事故の検証の中から考えてゆく、というのが現実的な考えではないでしょうか。

 生活重視・経済重視こそがこの国の成長の両輪です。そのために「脱・原発依存」をいかに科学的に進めてゆくかが問われています。補佐官は退任いたしましたが、原発収束に取り組んだ者として、ありとあらゆる力を注いで参ります。(了)

 

スタッフ日記「ターミネーターなんですもの…」
 6月の末から再び東京勤務になりました。3ヶ月ぶりの上京でしたが、代議士が総理補佐官を退任し、経産副大臣の就任要請を断ったことなどがあり、早々に顔なじみの記者さん達からたくさん連絡や情報収集の電話が入ってきました。「やっぱ俺が東京に来ると何か起こる。去年の夏もいきなり党の代表選が始まったしなぁ…」

 結局代議士は政権交代後初めての無役になりましたが、「今までは、政府の一員として自らの関わる政策以外は一切発言せずに来たが、思い感じることもたくさんあった。これからは、政策としてどんどん発信する」と意気込みも十分です。

 退任の翌々日には補佐官の時以来の2度目の福島訪問をして、現地の対策本部長、知事や20キロ圏内の町村長など関係者の皆様の生の声を聞いて回りました。そして今週は宮城・岩手の仙台平野から三陸海岸のほぼすべての被災地を見て回りました。そうした活動をする一方で、一言、「腹をくくって全力で復旧復興に取り組む」と言いながらテレビ出演や新聞・雑誌各社からのインタビューを精力的にこなすその姿は、近くで見ていると、ますますパワーアップし、進化していくターミネーターそのものです。

 そんな中、地元で人気のテレビ「たかじんのそこまで言って委員会」の「誰が総理大臣にふさわしいか?」という企画の中で、まぶちすみおがナンバー1になったよ、と奈良の支援者の方からご連絡を頂きました。東京でのパワーが近畿にも伝わったのでしょうか?でも、街頭のインタビューでは子供やお母さん方からの人気がやや低め。口々に言われるのが、「こわそう~」

 …だって、ターミネーターなんですもの。(スギ)

第496号 脱・原発依存