火山噴火の危険性

2012年4月21日 (土) ─

 首都中枢機能バックアップWTでは中間報告を3月に行ったところであるが、引き続き首都中枢機能の危機管理について検討を進めている。

 3月の中間報告は、想定される東京湾北部地震のリスク認識に基づいてバックアップ体制について取りまとめたもの。現状の危機管理センターの不備や首都直下型に対する代替性の不十分さを指摘し行政上の対策として現地対策本部に指定されている大阪をはじめとする地域の強化を求めた。

 しかし、この報告の前提となっているものも主に首都直下型地震である。そこに加えて、新たに火山の噴火に対するリスク検討も深める。

 火山の噴火というと、「富士山大噴火」などの「予言」っぽい話に聞こえて、たちまち「トンデモ系の話」に間違われそうだが、そうではない。

 実は僕自身、富士山はじめとする大噴火をリスク前提に置く、という発想については当初は、「???」だった。

 しかし、今回WTで、内閣府の火山情報等に対応した火山防災対策検討会副座長を務めてこられ平成22年に防災功労者内閣総理大臣表彰を受賞された藤井敏嗣(ふじいとしつぐ)東京大学名誉教授に、火山噴火と地震の関係についてお話を伺う機会を得て、考えが一変した。

 火山の噴火の定義は、「地下にある高温(1000℃前後)のマグマが地表に接近、あるいは噴出すること」である。そしてのこのマグマの粘性(つまりネバネバ具合、流れ出る速度にも関わる)は10億倍も変化するものだ。ドロッとでるものから、水のごとく流れるものまでまちまちなのだ。

 そして、噴火の前兆現象は必ずあるのだが、その時間スケールは数時間から数日まで幅がある。従って、「○○の予言」のように○月○日に噴火ということは予知し得ないが、今は何事もなくても一年後に大噴火ということも十分ありうる。

 しかも、いわゆる危険とされる活火山の定義は「最近1万年間に噴火活動があったもので現在も活発な噴気活動があるもの」だ。1万年前に噴火したものまで含めるとなると、相当数に上ると思われるが、全世界の総数は約1500。我が国にはその7%にあたる110の活火山があるのだから、やはり火山大国でもある。

 そのうち、首都圏に影響する火山は、箱根山と浅間山と富士山である。箱根は6万5千年前に大噴火があり3千年まえの噴火で芦ノ湖ができた。浅間山は1783年の天明噴火と1108年の天仁噴火が大噴火であるが、09年2月2日には小噴火があり東京に降灰が観測されている。

 そして、富士山であるが、これは当然日本一高い山である。言い換えれば日本一大きい活火山であり最もマグマの噴出率が高い火山である。そしてこの富士山の噴火は非常に不規則でありかつ噴火の形態は多様だ。数十年おきに噴火していた時代もあれば数百年静穏だった時代もある。爆発的な噴火もあれば、割れ目からの溶岩噴泉もあれば溶岩流、火砕流など麓を埋め尽くすながれや、山体崩壊など山が崩れ土石流、泥流となる最も危険な噴火もあった。

 まさに富士山は噴火のデパートだ。

 そして、当然ながら富士山の大噴火は首都圏に壊滅的なダメージを与える可能性が高い。一つは火山灰の降下。噴出全量は十数億立米とされ23区内で数千万立米とも言われる。当然ながら道路、鉄道はストップする。最も厄介なのは火山灰は帯電しており宙を舞うと電波障害が発生し航空機の飛来は不可能になる。つまり流通経済の破たんが予想されるのだ。

 世界中ではM9.0規模地震の発生後数年以内に火山噴火が誘発されている。直近でも2010年のチリ地震の後1年3か月後に噴火が起きている。今後我が国では、この噴火の危険を十分考えておかなければならない。そして歴史的にみても2千年から1万数千年とされる巨大噴火の繰り返し周期に照らし合わせても、日本では7300年前の鬼界カルデラ以来巨大噴火はない。かつて、文明を遮断したとされる巨大噴火の可能性までも十分にある我が国においては、今後さらなるリスクを考える必要があることは間違いない。

 最後に、藤井先生に別途取り組んでいる使用済み核燃料はじめとする高レベル放射性廃棄物の最終処分方法とされている地層処分について訊ねた。1万年の保管などを考えられる地層が我が国に存在するのか?と。

 藤井先生は、ハッキリ、すっぱりと、我が国にそのような場所は考えられない!、と仰った。

 やっぱりね...。

火山噴火の危険性