深夜の訪問者
大晦日の会館。相変わらず、僕たちの作業は続く。
東京で同居の長女は、冬休みに入って早々に奈良へ帰った。年末年始も帰らないからと宣言して、会館にこもって予算の準備と覚悟を決めたけど家族バラバラの正月は結婚以来初めて。
ま、おじいちゃん、おばあちゃんと皆で楽しく過ごしてね!と言ってはいたのだが家族から「お父さん、なんかクラーイ」とからかわれてた。それでも、帰郷して家族となごむしほりの穏やかな表情を眺めると、あらためて「家が一番だよね」とつぶやきながら「仕事、仕事!」と自らを追い立てて上京してきた。
「お父さん、一人じゃ嫌なんでしょ?!」、電話の向こうで笑いながら語るヒロコの言葉に「いや、仕事だもん!、ぜんぜん平気!」と応えていた。そして休日返上の連日の準備作業にも、気持ちが乗って慣れてきたところ。
と、そこへ深夜、眠りを打ち破って携帯が鳴る。
誰?
プッチ!。
「今、下にいるから荷物取りに来てって!ママが言ってる!」
げぇっ、何時だよ!?、3時半!?、どしたん!?
夜中奈良から車飛ばして、ヒロコとチビ二人と長男の錦之介がやってきた。「奈良から5時間よ。スゴイでしょ!」って、お前事故するぞ。「だって、お父さん、寂しがり屋だから。」
結局、奈良にはお姉ちゃんたち三人が残って、おじいちゃんおばあちゃん、義母の三人とで静かに正月を迎えることになった。正月三日まで、赤坂宿舎にチビッ子タイフーンとヒロコに息子がなだれ込んできた。
初めてのバラバラの正月は、奈良に6人、東京に5人のバランスを取る形となった。眠い目をこすりながら、「お前たち、まったく何時だと思ってるんだ!、起こすなよ!」と車から荷物を運びながらプッチとヒナコに声かける。
プッチが、思わずニコニコしてる僕を仰ぎ見ながら言った。
「パパ、怒ってるの?、うれしいの?」
「うん、うれしい...」
すこしだけ、あたたかい正月を迎えられそうだ。