旅立ちの日
地元へはとんぼ返りで、東京に戻る。・・・無事に終わった。
原発対応となって、何が起きるかわからないし、事態対処によっては統合本部を一時たりとも離れることなどできないと、ある程度覚悟はしていたけど、戻ることができた。
震災後でもあり、震災対応並びに原発対応となった今、一瞬どうしようかとも思ったが、新たな旅立ちの日を止める理由はない。送り出してやろう。
そう思って迎えた、次女の結婚式。二十歳の花嫁。
六人の子育て、両方の両親の介護、仕事に、選挙に、と明け暮れて、気が付けばもう嫁ぐような年に子どもは育っていた。
花嫁の父。
想像と違って、不思議に落ち着いていた。家での最後の挨拶、式場への送り出し。なんとなく、こんなもんかとも思った。
ところが、バージンロードを歩み出すとき、僕の左腕に娘の右腕が組まれた瞬間、胸の中がカーッと熱くなった。
ものすごく不思議な気持ちに包まれた。よちよち歩き、手を引いて歩いた幼いころ、そのころの小さな掌の記憶がよみがえった。
新郎は、がちがちに緊張しながらも僕の前でにこやかに娘へと手を差し伸べた。うれしそうにその彼の手を取る彼女の腰に手をやり彼のもとへと押し出す。喜びに満ち溢れた二人の後ろ姿を見て、ようやく送り出す花嫁の父の気持ちが実感を持って迫ってきた。
あの時の、かつて娘の門限破りに激怒した僕に、謝りに訪れ娘と二人正座し萎縮しきっていた彼(参照:2008年10月28日 まぶちすみおの不易塾日記 「『限定』解除」)が、今は自信に満ち溢れて立っている。
とても、頼もしく感じた。
補佐官として、震災に被災された皆さんや今も不安に苛まれている原発事故被害者の皆さんを助ける立場に立っていることもあり、二人には申し訳なかったが、身内だけの質素なものとしてもらった。
しかし、新たな旅立ちには変わりない。親として、心からの祝福をもって送り出した。
二十歳。短大を卒業してすぐの結婚。
昨年暮れ、就職が決まらないと言いながら、なんだかのんきにしてるなぁと思ったら、突然彼氏がやってきて結婚の申し込み。そして、結納、挙式とあっという間のできごと。
確実に家族の物語は、次章へと紡がれている。