予算編成への戸惑いを越えて
予算編成過程の中で、省内でもどういう決着がつくのか見えないことへの不安と苛立ちがあるようだ。
政治主導の名の下に行われる新政権の予算編成が、かつてない経験であるがゆえに出口への不安があるのは理解できなくもない。
しかし僕は、ことあるごと省内の職員には言っている。一喜一憂せずに、泰然自若、虚心坦懐に事に当たろうと。
職員の立場からすれば、予算獲得は政策の実行を担保する、すなわち自らの存在意義を示すことそのものであり、政策の企画立案は実行あってこそ意味があるものだと意気込むのもよくわかる。しかし、あまりにもそのことにこだわりすぎることがひいては財政当局の権限を高らしめてしまっていることに気がつかなければならない。
一生懸命がんばって、結果が思うようになることもあればならないこともある。あらゆる場面を想定しながら、全力を尽くす。常に融通無碍、こだわりを排することが必要だと言い続けている。
野党の新人候補として政治の道に入り、丸十年。それこそ真っ暗な出口の見えないトンネルの中にいるかのごとき苦悶の中で、走り続けてきた。それが、やっと歴史に残る政権交代。
戦後の長きに渡って続いてきた自民党政権下の予算編成の仕組みそのものを大きく見直し、新たに作ろうとするときに、あちこちにぶつかり、転げながら進んだり後戻りしたりするのは仕方がないこと。多少のことがあっても、この十年のことを考えればなんてことはない。省内では、この先どうなることやらと不安があるかもしれないが、いつも僕は笑いながら言っている。
「何があったって、命まで取られることはない。恐れず、ひるまず、淡々とやっていこうよ!」
秘書官たちも大きくうなずいて、僕を励ましてくれる。
半年前に、僕の前に立ちはだかり、必死に何かを覆い隠そうとしていたかのごとき役所の姿は、もはやない。信じることから始めてきて、徐々に、ジンワリと変り始めていると思っている。