下水道管に入る

2011年12月14日 (水) ─

 昨年のAPEC時のインフラ担当大臣会合で、国交大臣として海外へのトップセールスを行ったものの一つに下水管路の「更生管路工法」というのがあった。

 SPR(Sewage Pipe Renewal)工法と称するもので東京都などが主体となって進めてきた管路の補修・長寿命化工法の一つだが、その後も大臣視察で芝浦水再生センターでも見たことがあった。

 特に下水道のエキスパートというわけではないが、今回現場視察の機会を得て、東京都文京区千石の現場に伺う。白山幹線再構築工事ということで昭和7年の築後80年の馬蹄形下水道管路の更生工事。

 SPRとは、簡単に言うと、老朽化した管路の内側を硬い塩ビのシート(帯)で巻いていく工法。これにより、開削工事は不要となり工費、工期共に半減となる。また、下水を止めることなくライニングをして管路の更生工事ができるので、住民への負担が大幅に減じられる点も大きい。

 下水道管に入るのは、二十数年ぶりか。三井建設の新入社員時代に研修で入った記憶があるが、都市土木の中でも厳しい作業環境だった。

 都下水局の建設部長から、「一滴ルール」を聞く。

 一滴でも雨が降れば、作業中止、現場からの撤退、だそうだ。確かに狭い管路内での工事。雨による突然の増水など命に係わる可能性もある。

 天を見上げながら、雨降りそうだけど大丈夫、とホッとして作業着に着替え、マンホールを降りる。

 臭いますけど、と言われるが、さほど気にならない。下水道管路の中は比較的温かい。SPR工法で施工済みの現場と未実施の現場を見るが、施工技術の苦労の跡がうかがえる。全国42万キロの下水道の老朽化が進む中、その更生工事は今後ますます増えていく。

 厳しい作業環境の話になって、かつて、圧気の現場にも入ったと現場の所長さんに言うと、「もう、だいぶ減りました」とにこやかなお返事。

 公共工事の是非がとかく言われがちだが、人目に触れることのないこうした事業の重要性と我が国の技術の高さと真摯な作業従事者の皆さんの努力に頭が下がる。

 作業着を着替えて、国会に戻る。

 お風呂入らなかったんですか?と事務所の女性スタッフに聞かれるが、その必要ない!と一言。

下水道管に入る