「高速道路無料化」最終形

2014年4月19日 (土) ─

 政調において、マニフェストも含め基本政策のゼロベースからの見直しが各部門で行われている。国交部門でも「高速道路無料化」が見直し対象として掲げられた。

 この部門会議で、元大臣として取り組んだ結果についての報告の機会があった。

 国交大臣時代の2010年12月、無料化社会実験による検討の成果の取りまとめと翌年4月には発表の予定だった最終形の検討案を整理した。

 副大臣時代に路線選定を行い無料化社会実験によって検証したのは、渋滞や一般道からの配分交通量の転換、環境負荷、他の公共交通機関への影響などだった。

 当時、全ての交通モードへの影響評価のために、鉄道、バス、フェリー、RORO船、航空機などの旅客や貨物のデータを部外秘という断りで所管業界から全て提出いただいた。鉄道各社や航空会社などは、路線の正確な旅客データはある意味経営に直結する重要な情報であるため当初はずいぶんと出ししぶったものだった。それでも、所管監督の立場から部外秘ということで提出させた。

 また、山陽道と中国縦貫道のような並行路線では無料化によって交通量の配分が大きく偏重してしまうなどの分析結果を得た。

 こうして、社会実験によって得られたデータから選定された路線は約4,000km(事業中を含めると約4,400km)となり、これが無料化の対象となり、既に無料で供用中の区間を加えると約5割の区間(事業中を含めると約6割)が無料化可能路線という結果だった。

 これを、当時国交省内では「無料化最終形」という形で整理するところでもあった。
資料1:2014年4月3日「高速道路無料化」の最終形について(レジュメ)
資料2:2014年4月15日民主党政権での無料化実験の結果

 2009年衆議院選挙のマニフェストでは、無料化により既存の社会資本を有効に活用するという交通需要管理(TDM)の考え方により、生活コストの引き下げと地域経済の活性化を目指したものである。

(参考)2009マニフェスト
『高速道路は段階的に無料化し、物流コスト・物価を引き下げ、地域と経済を活性化します。』

 だからこそ、社会実験によって検証しその路線を決定するという政策実行を行ってきた。

 一方、財源の確保に関しては、社会実験実施は公共事業費の削減で確保した。更なる最終形を目指した恒久的な無料化の財源は、税投入を抑える形での実施スキームを目指す考えだった。

 具体的には、

(1)恒久的に資産とあわせて同等の債務を保有し続けることを認め、債務返済の負担を軽減する。(償還主義の廃止)
(2)高速道路会社のあり方を見直すことによって、高速道路事業の運営権もしくは高速道路会社の株式を売却し、その収益を活用する。
(3)近年の低金利に伴う利子負担の低下などにより生じる償還余力を活用する。
(4)高速道路事業における管理費のさらなる縮減や、第二東名など建設中の事業においてより一層のコスト縮減を図る。

の4点が考えられていた。しかし安倍政権となり、低金利による金利差による償還余力は維持更新の名の下に更なる償還期間の延長と併せてその財源に振り向けられることになった。

 また、事業コストの見直しでの財源確保などは自民党政権に望むべくもない状況だ。従って、考えられる選択は上記の(1)と(2)、すなわち償還主義の廃止と現在の道路会社の完全民営化による株式売却である。

 僕自身、道路会社の在り方の見直しについては野党時代より指摘してきたもので、大臣時代にいよいよそこに突っ込むことになるとすると、相当数の政治家・官僚含めて道路族の抵抗に遭うことを覚悟していたものでもある。

 最終形を目指して、財源確保を具体的に、どう考えるかということについては、次号で詳細を説明したい。

「高速道路無料化」最終形