第1157号 野党が果たす「責任」

2024年12月14日 (土) ─

 

政府の補正予算案は野党側の主張で修正され、12日、衆院で可決されました。

 

◆野党案受け入れ

これまでの予算審議と大きく変わったことは、与党が野党の提案を一定程度受け入れ、予算案の修正に応じたことです。これは28年ぶりのこととなります。

立憲民主党は、能登半島復旧・復興に対する支援が依然不十分として、1000億円の積み増しを主張するとともに、緊急性が疑われる基金への1.36兆円の支出を削減する対案を示しました。

このうち、復旧・復興費用の積み増しは与党との合意が成立しました。削減については残念ながら合意には至りませんでしたが、それぞれの党がお互いの主張を出し合いながら、話し合いで最適解を見出していく国会となったことは、総選挙前に比べて大きな進歩です。

こうした国会となったことは喜ばしい一方、われわれ野党も責任ある対案の提出と現実的な対応が求められるようになったとも言えます。

 

◆ガソリン暫定税率廃止へ

税制に関しても、自民・公明・国民民主の合意により、103万円の壁の来年からの引き上げが確認され、ガソリンの暫定税率が廃止されることになりました。

ガソリン暫定税率は、全国の道路整備の財源不足を補うために昭和49年に導入され、現在は本来のガソリン税に加えリッターあたり25.1円の暫定税率が上乗せで徴収されています。つまり暫定税率の廃止によってリッターあたり25.1円値下げが実現するわけで、これは日常生活への大きな支援になります。

直接的には自公国の合意によってガソリン値下げが実現することになりましたが、立憲民主としてもかねてよりガソリン税見直しを主張してきたところであり、率直に歓迎すべき合意と考えています。

税制については、今まで自民党内の税制調査会が「税制改正大綱」という案を作って、それを政府が閣議決定する流れが出来ていました。つまり、自民党税制調査会が財務省ともども日本の税制を作り上げ、それに基づいた予算が作成されてきたと言えます。

自民党の宮沢税調会長は早くも三党合意に対し、「釈然としない」と不満を述べており、今後の巻き返しがあるかもしれません。着実に減税が実行できるよう、立憲民主党としても監視を続けて参ります。

与党にとって聖域の税制までもが動こうとしている今、強行採決ばかりの与党、反対ばかりの野党という従来の国会の風景が変わり始めています。与野党の話し合いで政策を決めるこの流れを官僚機構は嫌がるでしょうが、国民の意を受けた国会議員こそが政策実現の中心にいるべきで、大いに歓迎すべき流れといえます。

 

◆政治改革でも合意を

予算や税制で合意が成立する中、私が所属する政治改革特別委員会では政策活動費の廃止や企業団体献金の禁止について各党が独自案を出し合い、それらに対する質疑が続いています。

政策活動費の廃止の方向性についてはおおむね合意ができつつありますが、例外支出を自民党が主張するなど、まだ予断を許しません。また、企業団体献金禁止については、今なお各党の主張にへだたりがあります。

しかし、へだたりがあろうとも、予算案や税制のように徹底的な審議と交渉を重ね、合意点を見出すことは可能です。臨時国会の会期は21日ですが、会期にこだわる必要はありません。中途半端な妥協で終わらせるよりも、この際、政治腐敗を防ぐという究極的な目的達成のため、国民の納得が得られるまで話し合いを続けるべきだと考えています。

 

 

タッフ日記「名は体を表す」

 

国会は法律を作る場で、ふだんいろいろな法律に接します。法律は国民にとって明快でなければならず、簡潔であればあるほど良いのですが、どうしても複雑で長い名前と条文になってしまう傾向があります。

もちろん名は体を表す法律もあります。例えば民法は「民」の法であり、人々の日常生活や家族関係を規律する法、刑法は「刑罰」を定めた法、商法は「商売」について定めた法で、それぞれ読んで字のごとくの法律です。憲法の「憲」ってなんぞや?と思う方も多いでしょうが、憲は基本となるおきてという意味で、これも簡潔明快です。

しかし、法律家はなぜか、長く難しい表現を好む傾向が強いようです。例えば刑事裁判の冒頭で読み上げられる被告人の罪となる事実は、どれだけ長くても一文で書く実務慣習があり、読み上げる検察官も息継ぎが大変そうです。

今のSNS時代は、短く要点をまとめる要求が強く、長い表現は嫌われます。一番長い名前の法律は、「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約第六条に基づく施設及び区域並びに日本国における合衆国軍隊の地位に関する協定及び日本国における国際連合の軍隊の地位に関する協定の実施に伴う道路運送法等の特例に関する法律」だそうですが、名前を聞くだけでうんざりする方もいるでしょう。

法内容のエッセンスをまとめ簡潔にするのは大変ですが、国民にとって意味不明な法律名になるのは困りもの。議員立法など新しい法を考える時にも、出来るだけ簡潔明快な名前で、名は体を表すものを目指したいと思います。

(アタリ)

第1157号 野党が果たす「責任」