第1165号 闇バイト撲滅への1歩
12日、私は衆議院内閣委員会で警察が新たに導入しようとしている「仮装身分捜査」について、警察庁と国家公安委員会委員長に質疑を行いました。
◆仮装身分捜査とは
仮装身分捜査と聞くと、スパイ映画やドラマの潜入捜査モノを思い浮かべる方もいるかもしれませんが、イメージされるものとは少し違います。
仮装身分捜査とは、捜査官が身分を仮装し、犯罪者に接触する捜査手法です。近年、インターネットを通じて詐欺や強盗の実行犯を募集する、いわゆる闇バイトが社会問題となっています。犯罪組織は、海外の通信アプリを使用し、実行犯と直接接触せずに指示を出すため、実行犯へたどりつくことが非常に困難です。
この問題に対応するため、身分を仮装した捜査官が闇バイトに応募し、組織と接触し情報を探ります。接触の過程で身分の提示を求められた時は、本名や住所を偽った身分証を提示することが出来ます。
これは、「おとり捜査」のように、例えば捜査官が麻薬の売買を働きかけ、犯罪行為を誘発するわけではなく、また「GPS捜査」のように疑わしい人物に警察の判断でGPSを付けて追跡し、個人の私的領域に侵入するものでもないため、警察庁はこの捜査手法に対し、任意の捜査として許容されるとの見解を示しました。
◆計画書のチェックが必要
しかし、この捜査手法に対する懸念の声もあります。
例えば、捜査官が身分を偽って捜査することによって、誤って一般人が犯罪に巻き込まれる可能性や、必要性がない場合にも捜査が行われることで、プライバシーの侵害が起きる可能性です。この点についても警察庁に問いました。
仮装身分捜査実施要領によると、各都道府県警察で定められる捜査計画書に基いて捜査がなされることになります。ところが、この計画書の内容は公表されず、事後的な検証の仕組みもないため、違法または不適切な捜査が行われた場合でも、裁判にならない限りその適法性が検証されることはありません。
そこで私は、捜査の手の内を犯罪者に明かせないことは理解できるが、しっかりと内部で監査する仕組みを整備することが必要ではないかと問題提起しました。
坂井学国家公安委員会委員長からも、各都道府県警察が行う捜査につき、警察庁でしっかりとチェックし、適切な運用を行うよう指導していくと答弁されました。これは、捜査の暴走を防ぐためにも非常に重要な答弁です。
◆捜査官と国民の人権保障
仮装身分捜査には捜査官と一般国民の身の安全をどう確保するかという大きな問題があります。凶悪な犯罪組織と接触する以上、もし身分が漏れれば捜査官の生命が危険にさらされます。そのため、捜査が危険と判断された場合は、現場の判断で速やかに撤退できる体制を整えることが必要です。
また捜査は犯罪者を追い詰めればそれで良いというわけではなく、一般国民が巻き込まれたり、不利益を受けないように進められなければなりません。
捜査の手の内を明かすことになるため、詳しい説明はありませんでしたが、犯罪者が身元確認を進める中で、無関係の人や場所を関係者、関係場所として誤解させるようなことは避けることが考えられるとの答弁もありました。
様々な課題はありますが、凶悪な強盗や詐欺で国民を恐怖におとしいれている犯罪集団による闇バイトは撲滅しなければなりません。しかし同時に、捜査における過剰な権限強化による人権侵害を防ぐ仕組みも不可欠です。
警察の捜査が国民の安全を守るためのものとなるよう、歯止めはしっかりとかけつつ、実効的な捜査運用を実現するために、今後もこの問題を追っていきます。
スタッフ日記「灯台下暗し」
冬に入ってから「おかしい。何か事務所が寒い」と感じることが多くなっていました。 しかし、エアコンの設定温度 は26度程度で、別に低くはありません。特に体調が悪いわけでもありませんでしたし、今年の寒さは格別だから外気によって窓付近が冷やされ、部屋の温度も上がらないのだろうかという仮説を立てつつも、これは明らかに寒すぎる、どうしたものかという日々が続いていました。
エアコンの故障だと考えるとつじつまが合うので、ついにサービスセンターに問い合わせたところ、驚愕の事実が発覚しました。国会事務所は議員執務室、会議室、事務室の3つの部屋に分かれているのですが、それぞれの部屋のエアコン設定温度に合わせて3つの部屋の吹き出し口から温風が出るのではなく、一番大きな部屋(=秘書などが入る事務室)の大きな吹き出し口から、3つの部屋の設定温度を足した温度÷3の温度の風が出る設計であることが判明したのです。
そして、議員執務室は本人が暑がりなので冬でも20度程度に設定されており、会議室も何気に20度程度に設定されていたのです。よって、いくら事務室を26度に設定していても、実際に出てきている風は(26+20+20)÷3で22度の冷風に晒されていたのでした。
まさに積年の謎の寒さの疑問が解決した瞬間でした。その後は設定を変更し、温かい部屋で業務に励めるようになりましたが、色々なことを分かっているつもりでも、身近な基本的なことさえ分かっていないという「灯台下暗し」のことわざそのものの顛末でした。 (アタリ)