集団的自衛権行使についてのFAQ

2014年5月1日 (木) ─

 連休明けの国会を控えて、残る国会の最大の課題になるであろう集団的自衛権行使についての意見を問われることが多い。

 そのたびに、きちんと答えているつもりだが、捻じ曲げて回答を載せられることも多いので、よくある質問に対する回答(FAQ)あるいは標準的な質問についての回答として、僕の考えを示しておきたい。

Q1.集団的自衛権の行使を容認すべきと考えるか?
A1.合理的限界を設定した上で集団的自衛権の行使を一部容認すべき。

 1980年代のシーレーン防衛、アメリカ軍への情報提供、リムパック参加、在日米軍経緯費負担をめぐる議論、1990年代のPKO等の自衛隊の海外派遣をめぐる議論、2000年代の弾道ミサイル防衛をめぐる議論等において、これまで政府は、集団的自衛権の行使は認められないとする一方で、個別的自衛権や警察権の拡大解釈で現実の状況に対処してきたという経緯がある。個別的自衛権のみを認め、集団的自衛権は認めないという解釈は、一見、平和主義に親和的であるように見えるものの、なし崩し的に個別的自衛権を拡大解釈していった場合には、逆に、その限界が曖昧になり、かえって平和主義の維持を危うくするという危険性を有している。

 個別的自衛権を本来の概念に忠実に限定的に解釈し、集団的自衛権の限界をきちんと設定した上、一定の限定された範囲で集団的自衛権の行使を認めるという検討が必要と考える。

 自衛権の概念を整理し、その限界を明らかにすることこそが、日本の平和主義を維持するために必要。また、その限界や基準を明らかにする議論を、公の場とりわけ国会で行うことで、日本の国際社会における役割や向かうべき方向性が明らかになり、また、そのような議論を通じて行政裁量を限定し、行政への監視を行うことも可能になる。

Q2.安倍政権の閣議決定による行使容認についてどのように考えるか。
A2.僕自身は、憲法は不磨の大典ではなく、時代に即した見直しは必要という立場だが、その立場から見ても安倍政権が進めるやり方は拙速と言わざるを得ない。

 集団的自衛権行使を容認する際、手続上の選択肢としては、(1)憲法改正、(2)安全保障基本法等の制定、(3)政府解釈変更の閣議決定の3つが考えられ、国民、国会の関与は(1)→(3)の順に小さくなる。

 自民党は、2012年衆院選、2013年参院選で、国家安全保障基本法を制定することを政権公約とし、(2)の立場をとっていたが、今回、政府は、「二度手間になる」として、(3)の手続き、すなわち国会が関与しない形で集団的自衛権行使容認を行なおうとしている。選挙の際に有権者に提示した手続と異なる、より簡易な手続を取ろうとしている点でも問題だ。

 今後の検討でどの範囲で集団的自衛権を認めるかにも関わるが、憲法上の原則である平和主義の性質を変えるような重要な変更を、公権力の主体であり、本来、憲法に縛られる立場にある政府が、閣議決定による解釈変更というやり方で一方的かつ恣意的に行うことには立憲主義や民主主義の観点から問題がある。憲法には、基本的人権、平和主義、国民主権といった、多数決や数の論理でも奪うことが許されない重要な権利や基本方針が規定されている。それを踏まえれば、重要な変更を行うには、多数を握っている時の政権与党内での議論だけでなく、国会において国民を巻き込んだオープンかつ徹底的な議論を行うことが最低限要求される。

ということ。

 この回答の1番だけ取り上げて「容認している」、とレッテル貼りされたこともあるが、1番と2番をセットで述べていることをしっかりと理解いただきたい。

 要はなし崩しは、ダメ。

 それに尽きる。

集団的自衛権行使についてのFAQ