道路無料公開原則

2007年11月21日 (水) ─

 来年の通常国会での大きな議論になると思われる道路特定財源の問題について検討を進めている。もちろん、党内的にはそれなりの責任者の判断が下されるのであろうが、僕は僕なりに精査を重ねている。

 いわゆる道路特定財源の一般財源化が今後与野党と共に論点となっていくと思われるが、僕のアプローチは「道路公団民営化の検証」だ。一昨年前に民営化された日本道路公団の現状を明らかにしつつその上で、道路特定財源がどう扱われるべきかを論じたいと思っている。

 既に召し上げられている財源を、やれアッチだ、コッチだと言っても始まらない。

 そもそも、「道路」とは何か。

 道路を規定する「道路法」、および昭和28年7月9日成立の実に100日にも及ぶ審議を果たした「道路整備費の財源等に関する臨時措置法」についてまで遡って考えなければならない。当時の議員立法提出者である建設委員会での田中角榮代議士の答弁は実に瑞々しいし今日の問題に対しても、示唆に富んでいる。

 さて、道路公団民営化の結果が如何に欺瞞に満ちたものになったかは来年の予算委員会で徹底的にやりたいと思っているのだがまずは現状認識をしなければならない。

 道路公団は分割民営化に伴い、施設の管理運営や建設は東日本・中日本・西日本の各高速道路株式会社に、保有施設及び債務は独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構に分割・譲渡された。つまり、国民の財産である高速道路を保有し巨大な借金を公団から肩代わりしているのは「機構」という一独立行政法人。
他方、高速道路を建設する民間の各高速道路会社は借金を背負ってないといういびつな構図がある。

 政府は機構が「民営化から45年後に債務を確実に返済し、高速道路を無料化する」としているが、少なくとも45年間は高い通行料を払い続けることになる。また、45年返済スケジュールは、平成33年以降に新規着工を一切しないことが前提だ。

 しかし各高速道路会社が新規着工をしないという保障は全くないし、新規着工を行えばこの債務返済計画は破綻することを意味する。つまり、現在のように向こう15年間毎年1兆円前後(平均値9千4百億円)の新規着工をしている間は、金利が4%程度(政府推定)の場合にはほとんど元本償還には回らない。

 国民はずーっと、利払いのための高速道路料金を払い続ける仕組みになっているのである。

 しかも現在は低金利だが、将来金利上昇は確実視されており4%を上回れば、現在の料金収入だけでは利払いすらできなくなる。

 つまり政府案では将来の高速道路料金が値上がりする可能性すらある。

 現在の機構の資金調達は政府保証債が中心(平成18年度で80.5%)だが、政府保証債は事実上の「国の借金」であり民営化は単に国の債務を簿外に移し替えたに過ぎない。いつものパターンで、独立行政法人である機構を作ることで国民負担を見えにくくしている、「離れの地下室化」に過ぎないのである。

 このように民営化は通行料金を永遠に払い続けるシステムの確立を意味し、当時民営化を行った政府側もそのことを重々承知しながら結局は公団など「道路族」に都合の良い制度が出来上がったに過ぎない。さらに民営化によりファミリー企業の独占に拍車が掛かっているのが実態。

 米英独など先進国の高速道路は無料が常識だ。高速道路計画がスタートした当初はあくまで路線ごとの建設費用を路線ごとの利用者の料金で返せば無料にするというのが国民への約束であった。

 高速道路の無料開放は、道路特定財源暫定税率分の約2兆5千億円のうち2兆円を毎年の負債の返済に回せば可能である。つまり、高速道路は「タダ」になるのである。

 旧道路4公団の負債について金利の低い今、国が借換債を国債として発行し肩代わりし、高速道路を一般の国道と同様に国の資産として無料化は実現可能だ。

 このことで金利リスクも極小化でき、国債償還の財源は道路特定財源の上乗せ分で充当できる。上乗せ分の約2兆5千億のうち、仮に年2兆円を債務の返済に回せば、30年あれば償還できる計算になる。高速道路の補修・修繕費は首都高などの大都市圏の高速道路をロードプライシングなどの一部従量有料化にすれば、毎年4千億円程度が財源として賄えることになる。

 また、新たな高速道路の建設は道路特定財源の債務返済を除いた余剰分の年5千億円で新直轄方式の導入等により総合的な交通体系の整備の中で実施すればよい。

 旧道路公団の債務の返済方法を変え、国が責任を持って返済するという本来のあり方に改善するだけで、高速道路の無料開放と既存債務の返済の両立が可能となる。

 そのためには、道路特定財源の活用が不可欠だ。土地代が安い上に輸送コスト減により企業の地方進出が進むとともに、公共事業依存体質からも脱却でき、地方が活性化するなど高速道路無料開放は、最大の課題である地方を疲弊から救うという解決の手立てになるのである。

 「道路の無料公開原則」は、今日の道路特定財源の創設者でもある田中角榮元総理が昭和27年の立法審議でも度々語ってきた。55年経って今、あらためてこの大原則を国民に向けて声高らかに訴えねばならない。

 「道路は無料公開が原則!」。

道路無料公開原則