遅すぎる日銀対応

2008年10月29日 (水) ─

 「日銀が利下げを含めた金融緩和を検討」との速報が流れてきた。財政政策と金融政策の双方によってのみ景気対策は実効性があるとかねてより訴えてきたが、政府は手をこまねいているばかりで財政政策の出動のみで金融政策は日銀まかせで置き去りという状態に危機感を募らせていたのが、ようやく重い腰を上げたということか。

 政府は財政政策としての定額減税を現金やクーポンなどの配布による「給付金方式」にする方向で調整とのこと。「減税」では所得が低いために所得税を払ってない人には恩恵がないのでこうなることは想定されていた。そもそも減税よりも広く薄く国民に恩恵を与えるということでは社会保障費の定額減額でもいいと僕自身は考えていた。加えて企業の社会保障負担の定額減額は中小零細企業にとってはきわめて大きなインパクトとなる。

 その意味で財政政策をマクロ的に考えれば、社会保障費の定額減額が企業にも個人にも大きな影響を与えることができると思う。

 さらに金融政策はようやく日銀が利下げ検討ということだがこれも遅すぎる。

 10月8日の連邦準備理事会(FRB)や欧州中央銀行(ECB)など6中銀が協調して政策金利の引き下げに踏み切ったことに対して、日銀は翌日山口理事が「今の0.5%という金利は、緩和水準が不十分なために追加的な緩和措置が必要だという認識は持っていない」と何ともトンチンカンな発言を行ってきた。

 ここで求められるのは、利下げと量的緩和による金融緩和政策だ。突っ張って、引っ張って、ようやく利下げ検討などという中央銀行の政策決定は、政府の景気対策と全く連動していないといわざるを得ない。

 ここはやはり金融政策のアジリティの確保のためにも、財金分離はよろしいが、「政策目標の共有」を日銀にも認識させるべきだ。

 もう、こうなるとやはり日銀法の改正は絶対に視野に置かねばならない。

 政府の肩持つわけではないが、日銀の独立性を盾に財政政策と金融政策のミクスチャーで行うべき景気対策を実施できない政権に意味があるのか。

 日銀は、日銀法3条、4条に示されている金融政策決定についての「自主性の尊重」、「開示努力」規定ならびに政府との「意思疎通義務」規定で行動している。これが、今次のような金融危機、経済危機の対応の足かせになっているとしか言いようがない現実がある。

 日銀の独立性を失わせろと言っているのではない。あくまで、政策目標の共有を政府と図る規定を持たせるべきだと言っているのである。

 利下げは必須である。そして加えて当座預金残高は先月平均で9.5兆だがかつての30~35兆円規模まで量的緩和を行うべきだ。その方法として、日銀による大規模の国債買いオペを実行すべき。

 かつて、僕はデフレ脱却のために福井総裁に1.2兆円規模の長期国債買いオペをさらに増やすべきではないかという質疑をしたことがある。そのときにも福井総裁は「国債の買い入れに特別の意味合いはない」と断言された。しかし実際にはゼロ金利政策となれば短期国債の札われも当然起きうる。思い切った長期国債買いオペはこの非常事態には量的緩和政策として意味を持つ。

 手段については、日銀の独立性を担保しつつその是非は国会などで議論すればよい。しかし、景気対策としての政策目標はやはり共有しなければならない。

 日銀の対応、遅きに失している。

遅すぎる日銀対応