責任所在不明の再稼働

2015年8月20日 (木) ─

 11日、鹿児島県の川内原発1号機が再稼働し、我が国で約2年間続いていた「原発稼働ゼロ」状態が終わりを告げた。国内の原発が再稼働するのは、福島第一原発事故後に制定された新規制基準の下では初めてだ。

◆見えぬ責任の所在
 原発の再稼働については、まず、事業者の申請に従い原子力規制委員会が規制基準に適合しているかどうかを審査し、適合すると判断されれば、地元自治体の同意等を経て、電力事業者の自主的判断によって再稼働がなされるという流れになっている。

 しかし、このような仕組みでは、誰が最終的に安全性に責任を持って再稼働の判断を行うかが明確ではない。宮沢経産大臣は、「事業者が…最終判断をして再稼働に至る」と述べ、田中原子力規制委員会委員長は、「規制委員会が再稼働しなければいけない理由は何もない」と述べ、さらに九電の瓜生社長は、「引き続き国の検査に真摯に取り組む」と述べるなど、それぞれが再稼働の判断は自らの責任では無いという押し付け合いを行っている。

 これでは、国民の間に再稼働についての不安が増すのも当然だ。事実、世論調査では今も過半数の国民が、川内原発再稼働に反対している。

 本来、福島第一原発の過酷事故を受けての原発再稼働については、その重大性から政府が最終判断を行うべきであり、併せて国民への説明責任も果たすべきだ。

◆原発比率維持への執着
 政府は、原発再稼働の最終判断は事業者にあるとして、表面上は見守る立場であるとの姿勢を示している。しかし、実態を見ると、エネルギーミックスで出された2030年における原発比率20~22%を何としても達成するため、再稼働を進めようという強い意思が垣間見えり。

 例えば、経産省は、現在停止中の原発が立地する自治体への交付金を、引き下げる方針を固めたと報じられており、減額を恐れた自治体が、今後、再稼働に同意していく間接的な圧力につながることが危惧される。

 また、使用済み核燃料再処理事業を行っている日本原燃を認可法人化して、国の関与を強めようとする動きも始まった。これらは、実質的には原発事業への支援にあたる。

 政府は、再稼働は民間事業者の判断だとしながらも、さらなる原発再稼働のための環境を着々と整えようとしている。

◆教訓忘れぬ原発政策を
 現在、全国的に危機的な電力不足は起きておらず、コスト高ではあるが、安定供給が続いている。また、川内原発に関しては、桜島に大規模噴火の予兆が見られるなど、災害へのリスクが高まっている。

 こうした状況下で、安全性や事故時の対応についての説明が不十分なまま再稼働を進めることは、福島第一原発事故の教訓を踏まえて、「原発依存度を可能な限り低減」するとした政府決定に自ら反するものだ。政府は原発の安全神話から決別するという原則に立ち返り、山積みの課題に対してひとつひとつ責任ある説明を行う必要がある。

 予算委員会が、8月中にも開かれる運びと聞いているが、再稼働の問題点についても質していきたい。

責任所在不明の再稼働