耐震偽装シンポジウム

2006年6月25日 (日) ─

 昨日は、東京の弁護士会館で開かれた日弁連主催の「耐震偽装事件の被害救済とあるべき建築生産システム」シンポジウムにパネラーとして参加する。

 一連の問題は、当局による関係者の逮捕や起訴によってもはや終わりを迎えようとしているように伝えられるが、肝心の被害救済は何一つ進展していない現実がある。

 閉会前に国交部門責任者の長妻代議士と、ぜひ閉会中に被害者救済の実効ある方策を民主党としてまとめましょうと語っていたところでもある。

 シンポジウムは基調報告、特別報告、パネラー6人によるパネルディスカッション、パネルでの特別報告、質疑応答と多岐にわたり、事前の打合せも含めて11時から17時と長時間にわたった。

 ヒューザーのGS(グランドステージ)の被害者住民の方も含めて多数の出席者の中、基調報告は耐震偽装事件の背景にある問題点の提起、特別報告はロサンジェルスにおけるインスペクション制度を中心にアメリカ建築制度の調査結果が報告された。

 そしてパネル。論点は、被害の実態と被害救済、再発防止に向けた法改正、あるべき建築生産システムの三点。

 これらについて、パネリストがそれぞれ意見を述べる。パネルの途中に、特別報告として法的責任が述べられるという盛りだくさんのシンポジウムとなった。

 とりわけ、マンション被害者住民の皆さんの切実な救済への願いの声が胸を打つ。

 政府の支援策はなんら実効ないという状況の中、手詰まり感は強く、もはや国家賠償法に基づく国家賠償責任を問う訴訟しか手はないのか?、というギリギリのところまで追い込まれている現実。

 政治に、強く救済を求められる声は、迫るものがある。

 与党の議員も出席だったが政府の代弁者のようで、歯切れ悪くなるのも無理はない。与党ワーキングチームの一員としてがんばっておられるのに気の毒にもなる。

 また、野党議員の私も超党派での取り組みを請われるが、政府の施策や措置に対して質疑でも糾し、対案を示してきた。与党が本気で取り組む気があるなら、先の国会でとっくに対応はすんでいるはずである。超党派でと言われても与党のほうが難しいものがあるんじゃないかなぁ、というのが正直な感想。

 活発な意見交換のシンポジウムとして終わったが、この閉会中の課題を確認した。

 シンポ終了後、GSの住民の皆さんとの会合も持たれた。必ず、個別具体的に対応させていただく旨伝える。

 終了直後、席まで来ていただいたご婦人。講演中もずっと真剣に聞き入っておられたその様子は、際立っていた。ご婦人と目があった瞬間、わかった。黙って頷きながら、「悲しいママ」です、と答えられた。

 『悲しいママさん、あきらめないでください。悲しがらず、寂しがらず、あきらめないでください。』

 心の中でつぶやきながら、「必死に取り組みます!」、とだけ口にするのが精一杯だった。

 世間は、事件が解決と報じられることによって被害の事実さえ忘れ去ろうとしているかのようだ。しかし、現実に直面する方々の苦悩はなお深い。

 国民の側に立つ政治家の、姿勢が問われているのである。

耐震偽装シンポジウム