監査業界をめぐる混乱

2007年5月7日 (月) ─

 財界が大揺れである。全部でないにせよ、相当数の上場企業が困惑している。

 わが国の5大監査法人の一つである「みすず監査法人」が解散決定したのは3月。1部上場などの大企業のほとんどは、公募増資などを世界市場で行ううえで投資家への企業情報開示の透明性と正確性を担保するために、いわゆる「ビッグファイブ(アーサーアンダーセン、デロイトゥシュトーマツ、アーンストヤング、KPMG、プライスウォーターハウスクーパース)」(アーサーアンダーセンはエンロン事件で消滅した)と呼ばれる国際規模の監査法人の監査証明が求められる。

 中小監査法人がダメだといっているのではなく、マーケットは企業の格付けを監査法人も含めてみているのである。

 そんな中、日本の5大監査法人の一角が崩れて600社あまりの顧客の大企業が新たな監査法人を必要とすることになった。大手監査法人は残り4社。当然ながら会計士らはいずれかの監査法人等に行くか独立するかとなるが、クライアントは大手を望む。あっという間に監査業界での需給バランスが崩れだす。

 一方、監査業界も大きな岐路を迎えようとしていた。公認会計士法の改正である。

 今国会で、政府から提出が見込まれている公認会計士法の改正は、かつての足銀事件(足利銀行の粉飾決算)から始まる監査法人の責任を問う市場や世論の声を受けて公認会計士に厳しい規範を求めるものになると言われている。あまりの監査業務のリスクの高さに、中小、独立系の監査法人はもはや廃業か大手への再編がささやかれている。

 このような市場環境の変化の中で、企業は放り出され、公認会計士たちは不安におののき、市場の活性化とは正反対の方向へと進みかねないことを懸念する。

 金融庁はこれまで市場の活性化をうたい文句に、新規市場の創設や公開、上場基準の緩和などをリードしてきた。しかし、一方で監査などのコンプライアンスの強化が世界的に叫ばれると日本版ソックス法や今回の公認会計士法の改正など、企業が戸惑い公認会計士が戸惑う方向に舵を切る。

 どうも、金融行政の一貫性が欠けているような気がしてならない。裁量行政を質してきたつもりだが、一貫性なき行政も質さねばならない。

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