特別立法債について

2011年8月5日 (金) ─

 震災復興のための復興債に対して、財源確保や償還期間についての議論が党内でもなされ復興対策本部における基本方針が29日定まった。

 財政は、基本的には歳入欠陥が生じたときは特例公債(赤字国債)にて特例法を制定しての対処となるが、過去にも特別立法債はあった。

 90年度、湾岸戦争の際の多国籍軍の平和回復活動に対して90億ドルの資金支援を行ったが、これは臨時特別公債の発行にて対応した。

 償還期間は5年間として、法人税、石油税などの臨時増税が行われた。しかし当時はバブル景気を背景に法人税収も19兆円前後で推移していたため影響は小さく、かつ90年度の赤字国債発行がゼロであったため景気に対するインパクトはほとんどなかったと考えられる。

 94年度には阪神淡路大震災対応のための震災特例公債が発行された。しかし、このときは償還財源の指定や償還期間は定められなかった。

 さらに、94年度から96年度にかけては97年度の消費税増税に先んじての先行減税を行うために減税特例公債を発行した。このときには償還期間を20年と設定したが、当然償還原資は97年度からの増税による増収を当て込んだものであった。

 このように、特別立法による公債発行について言えば、バブル期において影響がなかった税目を原資として5年償還、あるいは消費税増税を当て込んだ税目を特定しない20年償還という公債発行はあるが、震災における公債発行は償還財源の指定も期間の指定も行っていない。

 そもそも、通常の建設国債も赤字国債も償還期間は60年に設定されている。

 ま、赤字国債の60年償還ルールへの変更が85年になされたことは大いに問題とすべきところではあるが(06年3月2日の予算委員会で僕はそのことを質している)、現実に60年償還ルールがいずれの国債にも適用されている事実がある。

 建設国債の60年償還ルールの本来の意味は、負担の公平性の観点からも将来世代に効用が及ぶことを前提としているものである。

 内閣府推計の東日本大震災における被害額は16.9兆円。阪神淡路大震災の当時の兵庫県推計のおよそ1.7倍ということから復興費を見積もって「少なくとも19兆円」という数字がはじき出された。

 今回の復興事業に対しては、当然ながら公共事業分は建設国債で賄うとしても、それ以外の民生事業については復興債を充てるので財源をという議論となっているが、もともとの内閣府被害推計でも民間の建築物等で10兆円規模となっている。当然これらは予算総則で定められる建設国債対象事業にはならないが、実態としてはまさに「将来世代にまで効用が及ぶ」ものである。建設国債と同様の60年償還のように長期の償還期限を設けること自体何ら矛盾は生じない。むしろ、阪神淡路の時と同様に償還期間と原資を明定せずに「震災という事象に対する景気への配慮」を行うべきではないのか。

 むしろ、特別立法債で償還期間と財源を定めた臨時特別公債と減税特例公債の先例は、バブルや消費税増税という固有の状況があったものと言えるのではないか。

 復興基本法第8条に、復興債について「償還の道筋を明らかにする」よう求められていることを理由に原資を定めることの主張もあると思うが、僕は、むしろこれは建設国債(財政法第4条)及び赤字国債(特例公債法第2条)の規定と同様に、「償還の計画を国会に提出」する規定を復興債の特別法に位置づけることで十分であると考える。

 かつて、赤字国債の10年償還ですら反故にし借換債の発行を認め60年償還としてきた経緯において、景気の拡大を図らなければならない復興の時に短期償還と増税を前提とする議論を導こうとするのは、あらためなければならないと切に思う。

 あえて主語は省くが...。

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