新たな高速道路割引

2013年12月3日 (火) ─

 先週末の11月29日、高速道路の料金割引について発表された。報道の扱いも小さかったが、政権が代わり、少しずつ政策が歪められていくのを実感する内容だ。

1.割引の概要
 新たな高速道路割引は以下のような概要だ。

・通勤時間帯(午前6~9時、午後5~8時)の割引について、平日のみとした上で、利用回数の多い利用者に限定。
・主に普通自動車、軽自動車の多頻度利用者を対象としたマイレージ割引について、最大約14%割引から約9%へと縮小。
・観光振興を目的とした休日割引について、地方部に限定した上で、5割引から3割引へと縮小。
・高速道路の夜間利用を促進するため導入した深夜割引(午前0時~4時)は、5割引から3割引へと縮小。
・一方、トラックなど主に中型車の多頻度利用者を対象とする大口・多頻度割引は、現行の最大3割引から4割引へと拡充する。さらに4月からの消費税率引き上げ分を転嫁すればさらなる値上げとなる。

2.個人負担を軽減すべき
 この料金割引の制度は、一目で分かるとおり、一般の利用者を値上げして、トラックなどの割引を拡充するものだ。いかにも業界重視の現政権らしさが現れているが、この料金割引のみならず、国民には大幅な負担増を強いる一方で、企業に対して負担軽減を図るというが姿勢が明確だ。

 消費税増税を行いつつ、企業の利益を増すこととなる益税問題は放置し、復興増税についても法人税のみ来年度から前倒しして減税、高速料金についても一般利用者は値上げし、トラック利用者は割引拡充をするなど、業界重視が目に余る。

 本来は、個人負担を軽減することに目を向けるべきなのだ。4月からの消費税増税を実施する中、これ以上国民個人の負担増大を招く政策変更は避けるべきであり、業界の負担軽減ではなく、本来は個人の負担軽減を重視した料金体系を目指すべきである。

3.複雑でわかりにくい料金体系
 依然として、時間、曜日を限定し、車種もETC搭載車を対象とするなど複雑な割引体系となっている。このような複雑な料金体系は、かつての自民党政権下では時々の政治的なパワーに蹂躙されてきた結果であることを役所に入って知った。だからこそ、公平で公正な仕組みに変えなければと取り組んできたところでもあった。結果的にはその複雑な体系の見直しは東日本大震災の対応により中断されることになり今日現在まで残ってきた。

 割引が実施される時間帯前後における待ち車両の発生など、課題も多いことから、特に時間限定の割引は避けるべきだと思っている。

4.恒久的な料金体系の見直し
 民主党政権時代に、平成22年4月に高速道路6社の恒久的な料金割引の見直し案を提示し、首都高速、阪神高速の料金割引を恒久的なものとして見直しを行った。

 一方、NEXCO3社及び本四に関する料金については、先に述べたように東日本大震災による高速道路無料化の実験中断等によって恒久的な料金体系の見直し検討も中断したままとなってしまっている。

 発表された新たな料金割引の実施期間は明確にされていないものの、おそらく補正予算における予算措置との関係で決まるものと考えられる。つまり暫定的なものであり、高速道路の恒久的な料金体系のあり方については今もって何ら示されていない。

 今後、国交省が早急に検討を進め、今回のような場当たり的な割引ではなく、恒久的な料金体系を示すことが必要だ。その検討に当たっては、収益を最大化するという発想ではなく、今あるインフラを最大限に活用してその効果を最大化するという発想で取り組むべきである。政権時代に訴えてきたのは、まさに既存インフラの利活用としての高速道路の在り方なのだ。

 そして、そのためには交通量をコントロールしうる道路料金体系など、交通需要管理(Transportation Demand Management)の考え方に基づく料金政策が極めて重要であり、そのことをかねてより主張し実施しようとしてきた。

 残念ながら、道路政策については後退し出したと言わざるを得ない。

新たな高速道路割引