国防授権法案での予算削減

2011年12月15日 (木) ─

 12日、米国上下院両院協議会でグアム移転関連予算1.56億ドルの削減が可決した。5月12日の下院軍事委員会では政府要求通りの削減なしで可決し。しかしその後の6月16日の上院軍事委員会では1.56億ドル削減と既存予算執行のための四条件が付された。海兵隊出身のウェッブ上院議員、レビン軍事委員会委員長、マケイン上院議員らの政治的行動によるこうした委員会決定は、上下院で全く異なる判断となった。

 四条件のうち最も我が国に影響を与えるものが、この秋の国連総会時の日米首脳会談でオバマ大統領から野田総理にも迫ったとされる「普天間代替施設の具体的な進展の証明」だった。

 日本でも、環境影響評価書の提出が年内かと注目されているが、米国においてもグアム移転の環境影響評価の遅れもあった。人口17万人程度の島に5万から7万と言われている雇用者が流入するにはインフラが不十分ということで昨年の夏にやっとアセスが終わったという事情もある。すなわち、日米双方お互いに課題を抱えながら、なのだ。

 そして、委員会がねじれの結論のまま、5月26日には下院本会議、12月1日には上院本会議でそれぞれ可決され、両院協議会に付されていたのだが、その結論が12月12日に示されてたものだった。

 今日、明日にも、米国上下院本会議で議決されるが、1.56億ドルの削減はこれで決する。そして来年初頭の大統領署名へと突き進むことになるだろう。

 論理的には、大統領は法案の拒否権発動は可能だが、選挙を控える立場で言えばここで上院の判断に立ち向かうとは考えがたい。

 米国の予算は、法定されて初めて執行できる。

 一つは「授権法案」。国防であればその予算枠を決定することになる。その国防授権法案が今回上院の可決通り削減された。一方、授権法の範囲内で歳出内容を決定する法律がある。それが、軍事建設歳出法案である。これら二本で予算執行が行われていくのだが、自ずと授権法案が削減となれば、執行予算も削減となることになる。

 したがって、今回の決定は米国側にとってもよりいっそうこう着を招く結果になることは十分理解しつつも、議会には抗えないという日本と同様の構図が現出しているということだ。

 日本だけでなく世界中が、混沌とした状況に入りつつある。国内における地域事情、議会事情、さらには国際情勢並びにパワーバランスと、複数の要因が複雑に絡みながら物事を決していかなければならない。

 日米共に、政権にとっては緊張の連続だ。

国防授権法案での予算削減