再びバックエンド問題へ

2013年5月22日 (水) ─

 主催する「原子力バックエンド・環境・エネルギー経済研究会(BE研)」で昨年講演いただいた、米国のフランク・フォンヒッペル、仏のマイケル・シュナイダーの両氏と意見交換を行った。

 かねてよりBE研では、「使用済核燃料については核燃サイクルを停止し、将来的な最終処分の方法の目途が立つまで、廃棄物の保管を国が責任もって行う体制に転換する(責任保管)」と主張してきた。

 そして、この我々の主張は昨年9月の学術会議の「高レベル放射性廃棄物の処分について」で「暫定保管」という言葉で同様の概念として示された。
平成24年9月11日日本学術会議 回答 高レベル放射性廃棄物の処分について

 このことは、BE研の議論が学術的にもオーソライズされたことに他ならない。その意味では、先駆的な議論をリードしてきたとの想いは強い。

 また、一方、原子力委員会では昨年12月に「今後の高レベル放射性廃棄物の地層処分に係る取組について(見解)」をまとめ、使用済み核燃料などの高レベル放射性廃棄物の処分方法として「地層処分は妥当な選択」との見解を示した。
平成24年12月18日原子力委員会 今後の高レベル放射性廃棄物の地層処分に係る取組について(見解)

 このように、中立的なアカデミーは政策的選択肢確保のための時間を必要として暫定保管を主張し、原子力推進側は従来と変わらない地層処分を選択すべしという正反対の意見となっていた。

 一方、政府はというと昨年までの民主党政権での「革新的エネルギー・環境戦略」で「引き続き従来の方針に従って当面再処理事業には取り組むものの~あり方~体制~手段の問題~取り組みなど、結論を見出していく作業に直ちに着手する」と示され、見直しを明示していた。

 これが、今の安倍政権下では、総合資源エネルギー調査会・放射性廃棄物小委員会で5月28日第1回開催が行われ最終処分の取り組み見直しの検討を行うことになっている。

 つまり、参院選前には一切、この問題には触れない、ということだ。原子力委員会の組織の廃止・改編の見直しも現在検討準備作業中ということで秋の臨時国会に提出というありさま。残念ながら、見直しの機運を完全に、根こそぎ、無きものにしようとの意思が見て取れる。

 両氏との意見交換会にはBE研の事務局長の石井登志郎前代議士や櫛渕万里前代議士も参加しての議論だったが、両氏からはなぜそのような結論を導くのかと、驚きの声があがった。

 下野した今、原子力発電を含むエネルギー政策に対する根本的な解決方法を見出そうとする力が党内でも弱まってきている気がする。もちろん、野党の立場では実現は不能なことはわかっているが、あらためて積み上げてきた議論の延長上にある、あるべき姿を示していかなければならないと思う。

 BE研も多くの参加者が惜敗され、構成しなおさなければならない状況だが、参院選後にあらためて提言していけるように準備を整えていく。

再びバックエンド問題へ