もう一つの柱、「脱・安全神話」

2011年7月8日 (金) ─

 ストレステストではなく、基準の見直しが必要だと記したが追加の説明が必要だ。

 このような事故を引き起こしてしまった原発の安全基準を徹底検証することにはだれも異論があるまい。

 そして、今の原発の安全基準がどういうものかメディアやその他国民がほとんど理解していないのも当然だ。きちんと説明していないからである。

 まず、現在の原発の安全基準の想定外地震については、そもそも想定地震がどのように設定されているかを知る必要がある。

 これは原発特有のものでもあるのだが、主に三つの類型がある。一つは海溝型地震。これは近接する海溝の位置や規模を特定して海溝のストレス集中のメカニズムで地震を想定するもの。二つ目は、断層型地震。これは地質調査で近隣の断層を特定し規模を算出して地震を想定するもの。三つ目は、直下型地震。過去の断層型以外の地震から統計的に規模を算出して地震を想定するものである。

 これら三つのうち原発施設に特有のものが、海溝型地震と断層型地震の想定である。そして、問題だと思うのが断層型地震の挙動に対しての依拠が高い点だ。そもそも活断層などは、過去の地震の痕跡であり、確かに地震発生のストレスがたまりやすい個所とも言われているが今後そこで必ず発生するかは定かではない。いやむしろ、地震はどこでも発生しうるものである。

 現在の建築基準法では、直下型地震の想定、すなわち地震はどこでも発生しうるものとしている。

 そして、こうした三類型の地震の想定を、行っているのが電力事業者である。

 そもそも、ここが問題ではないのか。国が、それこそ会社任せではない、地震の想定を行うべきである。

 想定外か否かを、事業者任せにしている点が問題なのである。事業者が自ずと自分たちの都合のいいように解釈してしまったとしても、致し方ないのではないか。

 更に、津波対策の不備は巷間言われているものである。そして、僕が最も危惧しているのが、建屋そのものよりも配管などの耐震性である。配管や電気系統の老朽化も加味した耐震性がはたして十分基準に反映されているとは到底言えないと推量する。

 こうした耐震性に始まり、原発施設の安全基準の見直しこそが今回の事故の問題の本質にある。

 いくらストレステストをやったからと言って、安全性が確保されたことにはならない。

 前にも述べたが、「脱・原発依存」は極めて重要なエネルギー政策である。

 しかし、これはエネルギー全般に対するポートフォリオ政策だ。もう一つ、車の両輪として政策転換しなければならないのは原子力政策としての「脱・安全神話」である。

 エネルギー政策としての「脱・原子力依存」、そして原子力政策としての「脱・安全神話」。

 この二つを、車の両輪として回さなければならない。

もう一つの柱、「脱・安全神話」