「折り梅」

2008年6月30日 (月) ─

 映画監督の松井久子氏を招いての第5回「一語一会」。今回は、監督の2作目である「折り梅」の上映会と対談という2部構成となった。

 テレビ界から転じた松井監督の第1作は、新藤兼人脚本の「ユキエ」。「戦争花嫁」を題材として、アルツハイマーとなったユキエと夫のリチャードの夫婦愛を通じて、女性の秘めた「生き抜く」力強さをさりげなく伝える作品。

 この作品の後に、認知症の姑と向き合う嫁とその家族を通じて、生きるとは「受け容れる」こととのメッセージを発したのが「折り梅」であった。

 この作品のすごいところは、2002年に公開した当時は単館上映で全国30館程度だった。しかし、映画を観た観客の口コミによってその後実に1300回以上の自主上映会が実施され、観客動員は軽く100万人を超えた。

 リアルだけれど、暗くならない人に対する慈愛に満ちた作品が多くの人の心を揺さぶったのだろう。足掛け7年の歳月をかけて息長くメッセージを発信し続ける作品。松井監督の「想い」をお聞きする一語一会となった。

 会場は、予約で満杯。映画と対談という長時間にもかかわらず多くの皆さんが興味深く見入り、聞き入ってくださった。

 松井監督の次回作は天才彫刻家イサム・ノグチの母を描く「レオニー」。これも、女性の「生命」をつむぎだす大地のような力強さを描くものとなるだろう。

 僕自身、母のアルツハイマーの話を交えながら、一語一会の締めくくりに松井監督に今思い浮かぶ「一語」をお聞きした。

 一言、「志(こころざし)」と言われた。

 志を持って、生きる女性の強さとやさしさとしなやかさに、これは到底かなわない、とただただ脱帽だった。

「折り梅」