「バックアップ」も重要

2012年2月12日 (日) ─

 バックエンドだけではなく、バックアップもやっている。何それ?って聞かれそうだが、首都中枢機能のバックアップだ。

 昨年の東日本大震災の教訓も踏まえて、首都直下型地震によって官邸機能をはじめとする首都中枢機能がマヒしてしまわないような危機管理体制の構築は極めて重要だ。

 とりわけ、1月23日に報道に付された東大地震研の「M7級直下型地震は4年で70%の確率」は衝撃をもって国民に伝わった。その後、地震研の研究者も訂正コメントを発しまた政府も混乱を収束するために従来の政府の中央防災会議で議論されてきた「30年で70%」に一義的に統一とすることになったが、いずれにせよ危機が切迫する状態を想定したバックアップ体制についての議論は重要だ。

 国交省では補正予算によって「東京圏の中枢機能のバックアップに関する検討会」が設置され、そもそも中枢機能とは何か、バックアップすべき代替機能とは何か、バックアップの状態はどのレベルであるべきかなど網羅的な検討を有識者によって行っている。

 こうした検討が政府で行われる中で、党としても議論を行おうと「首都中枢機能バックアップWT」が内閣部門会議に設置され僕が座長に就くことになった。副首都構想も含め、極めて重要な課題だとの認識を持っていたので打診をいただき快諾した。

 これからの検討項目として種々あるが、政府が訂正したとはいえ東大地震研の研究自体は確認の必要がある。

 そもそも首都圏直下型地震とはそもそもどのような地震を指すのか。

 政府の中央防災会議による「首都直下地震対策大綱」では2010年1月に、(1)ある程度の切迫性が高い、(2)都心部の揺れが強い、(3)分布が広域的に広がっている、との理由から首都地域で想定される18タイプの地震像のうち、北米プレートとフィリピン海プレートの境界で発生するM7.3の「東京湾北部地震」を対策検討の中心としている。

 そしてこの大綱では過去150年間に起きたM6.7-7.2の地震を数えてその頻度から確率を求めている。つまり定常的な地震活動の中から首都直下地震に相当する地震を選び出して発生確率を計算しているのである。

 一方、今回の東大地震研の試算は上記のような定常的な地震活動を対象にしたのではなく、3.11の東北地方太平洋沖地震の誘発地震活動を対象にしたもの。そもそも大きな地震はめったに起きない。また小さい地震はよく起きる。地震の頻度というのはマグニチュードが小さいほどたくさん起こり、大きくなるほど少ないということが経験則から明らかにされており、これを表現するのが「グーテンベルク・リヒターの式」だった。

 一方、大きな地震が起こると余震がたくさん発生する。そしてこの余震は大地震後の時間経過に伴って減る。これを数式で表したものが「改良大森公式」と呼ばれるものだ。

 今回はこれらの二つの公式を組み合わせて「余震の確率評価手法」というものを作り、これにより昨年9月時点での3.11地震の前後での首都圏の地震活動データを元に計算した結果として「M7程度の誘発地震が今後4年間で発生する確率70%」が導き出さたのである。この「余震の確率評価手法」による全く同じ算出方法で「今後30年間で98%」という確率も出てくる。

 また昨年12月時点で計算すると「30年間で83%」、現時点では「15年間で70%」と減じた結果となり、この数値そのものを論ずる意味はないと東大地震研の研究者もコメントしている。そもそも政府試算とは評価や対象が違う。

 しかし、いずれにしてもM7級の地震が首都圏をいつ襲っても不思議はない状況であることを肝に銘じなければならない。

 WTでは、一カ月程度で意見のとりまとめを行い国交省の検討会に向けて発出したいと考えている。

 バックエンドでなくバックアップも重要。

「バックアップ」も重要