集団的自衛権行使に関する閣議決定


本日夕、安倍内閣は臨時閣議において「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」を閣議決定した。いわゆる集団的自衛権行使に関する憲法解釈の変更を行ったものである。

※閣議決定本文
http://www.cas.go.jp/jp/gaiyou/jimu/pdf/anpohosei.pdf

 この全文を通読して、コメントを発しておきたい。

 まず前提として、僕が主張する集団的自衛権の限定的容認論と安倍政権の閣議決定は根本的に違う。
http://mabuti-sumio.cocolog-nifty.com/blog/2014/05/faq-e7dc.html

閣議決定は、武力行使の範囲の拡大を前提としているが、僕の議論は必ずしもそうではない。
集団的自衛権の一部容認は、必ずしも武力行使の範囲の拡大を意味するものではない。
僕が集団的自衛権の一部容認論を主張する理由は、政府のこれまでの個別的自衛権のなし崩し的な拡大解釈への問題意識だ。

 政府のこれまでの拡大解釈により、日本の自衛権の範囲は、すでに実質的には集団的自衛権に一歩踏み出している。それならば、個別的自衛権と集団的自衛権の概念整理をしっかりと行い、個別的自衛権・集団的自衛権双方の限界にしっかりとした限定を加えるべきと考える。

そこには、「際限なき行政裁量」に限定を加えるという、僕の政治家としての信念がある。
それを前提に、今回の閣議決定についてのコメントを述べる。

○1頁目「我が国の平和国家としての歩みは(中略)これをより確固たるものにしなければならない」
⇒首相会見においても、平和国家として地位を確固たるものとすることが幾度となく強調されてきたが、「武力の行使」の範囲の拡大が、なぜ平和国家としての地位を確保することに繋がるのかの十分な説明がない。
また、多くの国民もその点を疑問に思っている。武力行使の範囲の拡大を行うならば、その理由を示すことは本来最重要の事項のはず。

○6頁目「これまでの憲法解釈のままでは必ずしも十分な対応ができないおそれがある」
⇒自衛権行使の「外縁」、すなわち武力行使の範囲を拡げることを前提とした理屈だ。
自衛権行使の外縁を拡げるのであれば、その理由を示す必要があるにもかかわらず、結論ありきの議論になっている。理由として、「我が国を取り巻く安全保障環境の変化」を挙げているが、それも何を意味しているのか判然としない。仮に朝鮮半島有事への備えを理由とするならば、それを明確に示すべきだ。
理由・必要性が示されない中での自衛権行使の外縁拡大は、今後の政府による恣意的な拡大解釈を許しかねない。
理由・必要性を示すことは、行政裁量を限定する根拠となる。
はっきりと理由・必要性を示さない表現からは、政府のフリーハンドを残しておきたいという意図が見て取れる。

○7頁目で示されている「新三要件」
⇒文言上、新三要件は、「武力の行使」、「実力の行使」に関するもの。集団的自衛権に限定する旨の言及はない。したがって、この新三要件が、集団的自衛権のみならず、集団安全保障にも適用される余地を残す。すなわち、我が国が、湾岸戦争やイラク戦争のような国際紛争の場において、将来、武力の行使を行う潜在的可能性を残すものだ。

⇒集団的自衛権に慎重な公明党への配慮から、集団的自衛権への言及は、「国際法上は、集団的自衛権が根拠となる場合がある」と述べるにとどまっているが、それがかえって、上に述べたように新三要件の適用範囲を不明確にし、限定を曖昧にしている。

⇒「明白な危険」要件については、それをどうのよう判断するのかという観点が欠けている。憲法判例では、「明らかな差し迫った危険の発生が具体的に予見されること」(最判平成7年3月7日)等、さらに限定を加える文言が使われるが、最低限、このような限定が必要ではないか。(限定要件をこれに限る趣旨ではない。また、朝鮮半島有事を想定するのであれば武力行使について地域的限定を加えることも一案ではないか)。

【まとめ】
 戦闘下におけるシーレーンの機雷掃海等について公明が難色を示すなど、自公で新三要件の適用をめぐる解釈に食い違いがある。本来、通常の法案であれば、国会審議の政府答弁などを通じて解釈は明確化され、行政裁量は限定されていくが、今回の閣議決定は、与党協議というブラックボックスにおける議論のみで決定され、そのプロセスは極めて不透明だ。これでは解釈の明確化や行政裁量の限定は全く行われていないことになる。
プロセスの不透明性は、進め方の妥当性(広い意味でのデュープロセス)といった手続上の問題だけでなく、行政裁量の無限定性という意味で、実体法上の問題も生じさせることになる。
国会審議を通じて、これまで「際限なき裁量行政」と闘ってきた政治家として、今回の閣議決定に強い危機感を覚える。

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